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「女性家族部廃止は国家と社会のため」…ジェンダー平等退行する保守野党の大統領候補

登録:2022-01-10 09:32 修正:2022-01-10 10:22
野党「国民の力」のユン・ソクヨル大統領候補が7日午後、ソウル汝矣島の党本部で、開発特恵疑惑で被害を受けた大庄洞の地元住民と面談している=共同取材写真//ハンギョレ新聞社

 国民の力のユン・ソクヨル大統領候補が、「女性家族部廃止」「性犯罪虚偽告訴罪の処罰強化」など、ジェンダー平等の流れに逆行する政策を連日打ち出している。最近の各種世論調査で支持率が落ち、大統領選のカギを握っていると言われる20~30代の男性を狙い、自分なりの戦略を繰り広げたのだ。野党第一党の大統領候補が「男女分断」を通じて分裂の政治の先頭に立っているという批判が出ている。

 ユン候補は7日、自身のフェイスブックに「女性家族部廃止」という7文字を載せたのに続き、8日は記者団に「性平等家族部にするという公約は変わったのか」という質問に、「今の立場は女性家族部廃止の方針であり、他はもう少し考えてみる」と明らかにした。ユン候補は、「男女分断という指摘をどう思うか」という質問にも、「どんなことでも国家と社会のためにすることだと考えてほしい」とだけ答えた。自身のこれまでの公約まで覆すものなのかに対する明確な説明なしに、女性家族部廃止だけを強調したのだ。ユン候補はその後、フェイスブックに「女性家族部廃止が正しい。これ以上男女を分けるのではなく、児童、家族、人口過疎問題を総合的に扱う省庁の新設を推進する」と書いた。

 ユン候補の「女性家族部廃止」の主張は、最近の世論調査で20~30代の若者世代の支持率が大幅に下がり、これらの人々のうちかなりの数が野党「国民の党」のアン・チョルス候補への支持に移動したことに対する危機意識が反映されたものとみられる。リアルメーターが今月3日から4日、全国の20~30代の有権者(18~39歳)1024人を対象に実施した大統領選世論調査の結果(信頼水準95%、標本誤差±3.1ポイント)によると、ユン・ソクヨル候補の支持率は18.4%だった。与党「共に民主党」のイ・ジェミョン候補(33.4%)に大きく水をあけられただけでなく、国民の党のアン・チョルス候補(19.1%)とも誤差の範囲内で接戦している。特に、20代(18~29歳)の男性有権者のアン候補(31.1%)に対する支持率は、ユン候補(15.8%)を倍近くリードしていることが調査でわかった。昨年のソウル市長補欠選挙で、オ・セフン市長の勝利を牽引したと評された「若者層」の支持が、ユン候補からアン候補側に移ったものだと分析できる点だ。

 「女性家族部廃止」カードは、国民の力のイ・ジュンソク党代表が主張してきた「20・30代男性」を主なターゲットにした大統領選戦略を後押ししたものでもある。イ代表は8日、フェイスブックに、「ここ数日、女性家族部解体の公約や多くの政策が明快に整理される過程をみて、多くの方が急なスピード感と変化を気にしている。選挙対策委員会が発展的に解体して、これまで党の哲学に合わない、個別スカウトされた人々の発言がもたらした混乱がだいぶなくなった状態」だと書いた。ユン候補の女性家族部解体の公約などが、京畿大学犯罪心理学学科のイ・スジョン教授や韓国人女性政治ネットワークのシン・ジエ元代表を選対委にスカウトしたことによって背を向けた20~30代の男性投票者の票を取り戻すために、計算された行動だということだ。ある国民の力の当選1回目の議員は、「若者層内部の違いと対立に対する考慮もなく、イ・スジョン氏とシン・ジエ氏のスカウトで20代の男性と女性の投票者の心を同時につかもうとしたユン・ソクヨル候補の『核心関係者(最側近)』の手法である『なんでもかんでも包容する政治』の失敗が、イ・ジュンソク党代表流の『20代男性政治』のための空間を切り開いた面がある」と指摘した。9日に発表した「兵士の給料を月200万ウォン(約19万3000円)」の公約も、20代男性を狙ったものだ。

 しかし、ユン候補が20代男性が持っている女性家族部に対する反感を積極的に受け入れ、廃止を前面化したことは、女性家族部が逆差別を主導し急進的なフェミニズムの理念を実行する先頭に立っているという歪曲された主張を、そのまま広めたものだという指摘が出ている。女性現実研究所のクォン・キム・ヒョニョン所長はこの日、フェイスブックに、「男超(男性が中心ととなっているネットコミュニティ)での女性家族部廃止の主張の中心的な根拠の一つとしてよく語られているのは、ゲームシャットダウン制」だと述べ、「ゲームシャットダウン制は、2011年に施行された。李明博(イ・ミョンバク)政権の時だ。今はユン・ソクヨル陣営に合流しているシン・ウィシン議員とソン・インチュン議員の主導で作られた法だ。では、シャットダウン制を廃止したのは誰か。クォン・インスク議員やリュ・ホジョン議員などのフェミニスト議員が乗りだし、改正案を代表発議して廃止されたのだ」と指摘した。「20代男性投票者」だけを狙い、事実関係に対する確認なしに女性家族部を一種のスケープゴートに追い込んでいるということだ。

 ユン候補が6日に明らかにした「性犯罪虚偽告訴罪の処罰強化」の主張も、性暴力の被害者に対する2次加害を「合理化」する公約だという批判が出ている。2次加害を懸念して性暴力の被害事実を申告しにくい現実のもとで、性暴力特別法上の虚偽申告罪の処罰を強化するということは、被害者を萎縮させる結果につながりかねないということだ。

 ユン候補のこのような退行的な振舞いが、実際に若者の生活を改善する政策を論議する機会を妨げ、韓国社会を「ジェンダー分断」の泥沼に引きずり込むだろうという懸念も出ている。韓国人女性政治研究所のキム・ウンジュ所長は、「『女性家族部存廃の賛否』の枠組み自体が、ジェンダー平等や20~30代の女性が提起するアジェンダを埋没させてしまいかねない。人口の半分を占める女性に関連する政策を推進する重要な政府官庁を、このような軽い政治的な見世物に使うのは、政治家としてやってはならないこと」だと指摘した。「ジェンダー政治研究所(ヨセヨン)」のクォン・スヒョン代表も、「若者の生活を改善する政策は出さず、一部の男性の怒りの感情だけを利用することであり、むしろ若者を(政治工学的に)軽々しく消費するもの」だと批判した。

キム・ミナ、イム・ジェウ、パク・コウン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/politics_general/1026625.html韓国語原文入力:2022-01-10 07:43
訳M.S

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