文在寅(ムン・ジェイン)大統領が9月の国連総会の演説で終戦宣言を再提案した。これに対し北朝鮮は、終戦宣言の先決条件として、「二重基準(ダブルスタンダード)」をやめることと「北朝鮮に対する敵視政策」の撤回を掲げている。この二つの条件の意味は何か、どのように対応しなければならないのかを考えてみる必要がある。
一つ目の「二重基準」の意味は、「我々(北朝鮮)の自衛権次元の行動はすべて脅迫的な『挑発』だと罵倒され、自分(韓国)の軍備増強活動は北朝鮮に対する抑制力の確保だとして美化」しているというキム・ヨジョン副部長談話(9月25日)に込められている。
しかし、南北間の問題は、どちらか一方が主張する基準を他方に要求したり貫徹する方式では、解決していくことはできない。南北間の合意や国際社会の規範を尊重し、対話を通じて解決策を探っていかなければならない。国際社会が北朝鮮の弾道ミサイル発射を国連安全保障理事会の決議で禁止した理由は、北朝鮮が核拡散防止条約(NPT)に違反し核兵器を開発したからだ。北朝鮮の核開発は、南北が1992年に公約した「朝鮮半島非核化共同宣言」に違反する行為でもある。
北朝鮮が南側の軍事活動に不満と意見の相違を持っているのであれば、南北が2018年に締結した「9・19軍事合意」にしたがい南北軍事共同委員会を稼動し、軍事訓練や武力増強の問題など相互の関心事について協議することが望ましい。南北が膝を突き合わせ、相互の軍事活動の透明性と予測性を高め、脅威を減らす方法を考えなければならない。あわせて、南北が合意したとおり、軍事的緊張の緩和と信頼構築を基に、段階的な軍縮も実現させていかなければならない。
二つ目の条件の「北朝鮮に対する敵視政策」は、北朝鮮が核とミサイルの開発の名目として提示し続けてきた概念だ。北朝鮮のキム・ソン国連大使は、最近の国連総会の演説で、「敵視政策」は決して抽象的なものではなく、日常的な米国の軍事的脅威と敵対行為それ自体だと規定した。朝米関係を法的に戦争状態にある交戦国間の関係と規定し、北朝鮮が常に戦争の脅威のもとにあるとも主張した。
北朝鮮の一方的な「北朝鮮に対する敵視政策」の撤回の主張は、共感を得がたい。短期間のうちに解決できる問題でもない。対話と交渉を通じて、非核化措置とともに段階的かつ同時的に信頼を構築し、根本的に解決していかなければならない問題だ。
文大統領が提案した終戦宣言は、相互の敵対関係の根源である停戦体制の変化を論議する、すなわち恒久的な平和の定着の出発点と非核化の促進剤として、極めて意味ある措置だ。終戦宣言は政治的な宣言であり、平和協定を締結するまで現在の停戦協定をそのまま維持する。また、終戦宣言は、高額の費用や軍事分野の急激な現状変更なしに相互間の信頼を増進できる有用な措置だ。
北朝鮮は終戦宣言に先決条件を掲げるのではなく、敵対関係を解消し非核化を達成するための対話に前向きになってほしい。米国は、北朝鮮に敵対する意思はなく、条件なしに会う準備ができているという立場を何度も明らかにしている。ここから一歩進み、2006年11月の韓米首脳会談で終戦宣言を最初に提起した当事者である米国が、終戦宣言の推進に力を入れることを期待する。
キム・ヨンヒョン|東国大学北朝鮮学科教授 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )