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[コラム]「二層ゲーム」と韓日首脳会談

登録:2021-07-22 07:03 修正:2021-07-22 09:11
二層ゲーム//ハンギョレ新聞社

 外交と国内政治の関係をめぐり、相反する意見がある。まず、外交と国内政治を厳格に区分し、外交が国内政治に振り回されてはならないという主張だ。このような立場の人たちは、外交が国内政治の手段になってはならず、外交の独自性と専門性を保障すべきだと強調する。

 一方、外交と国内政治は連携し、相互作用するという主張もある。1988年に米ハーバード大学政治学科のロバート・パットナム教授が発表した論文「外交と国内政治:二層ゲーム(two-level games)の論理」が代表的な例だ。パットナム教授は国際政治と国内政治を厳格に区分してきたこれまでの学界の慣行を批判し、「二層ゲーム」理論を提示した。外交は国家間の交渉という外部のゲームと国内政治という内部のゲームが二つの次元で同時進行するという内容だ。政府が対外交渉で合意しようとする内容は、国内で国会と利益集団からも同意(国内批准)を得なければならないということだ。

 これまでの理論では、国家間交渉の結果は、その成否にかかわらず、その国家の自発的な選択と考えられてきた。二層ゲーム理論は、国家間交渉で両国の交渉当事者が合意しても、国内批准がなされなければ交渉が決裂するケースを想定する。「非自発的(合意)不履行(involuntary defection)」だ。このような事例は、韓日関係だけでなく、2000年代の韓米投資協定とスクリーンクォーター交渉、1990年代半ばのコメ市場開放と関連したウルグアイ・ラウンド交渉などでも見られる。

 二層ゲーム理論の核心概念は「ウィンセット」(win-set)だ。パットナム教授はウィンセットを「与えられた状況で国内批准を得られるすべての合意の集合」だと説明した。双方のウィンセットが重なる部分が合意可能な領域なので、ウィンセットが重なる部分が大きいほど交渉妥結の可能性が高くなる。二層ゲーム理論の枠組みからすると、韓日関係になかなか進展がみられない理由は、歴史問題など懸案で重なるウィンセットの範囲が非常に狭く、「加害者日本」との合意に対する国内批准が難しいからだ。さらに韓日関係は、両国が隔たりを埋めたとしても、突如現れた悪材料によって振り出しに戻る場合もある。最近も、東京五輪を機に進められた韓日首脳会談が、他の原因に加え、在韓国日本大使館の相馬弘尚総括公使の暴言で波紋が広がったことで見送られた。

 このように、二層ゲーム理論で韓日関係が行き詰まった原因は体系的に分析できる。しかし、これといった解決策を見出せないのが現実だ。

クォン・ヒョクチョル論説委員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1004488.html韓国語原文入力::2021-07-22 02:38
訳H.J

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