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文大統領、市民への「侮辱罪告訴」取消…「耐えるべきだ」との指摘受け入れ

登録:2021-05-05 07:10 修正:2021-05-05 08:17
文在寅大統領=大統領府提供//ハンギョレ新聞社

 文在寅(ムン・ジェイン)大統領が自身と家族を非難した30代男性を侮辱罪などで2年前に告訴した事件を取り消すことにした。親告罪である侮辱罪は、被害者が処罰意思を撤回した場合は起訴できない。最高権力者である大統領が市民個人を処罰するよう請願するのは行き過ぎだという市民社会と野党の指摘を受け入れたものとみられる。

 大統領府のパク・ギョンミ報道官は4日、「文在寅大統領は2019年にビラ配布による侮辱罪に関し、処罰の意思を撤回するよう指示した」と明らかにした。「主権者である国民の委任を受け国家を運営する大統領として、侮辱的な表現に耐えるのも必要だという指摘を受け入れ、今回の件に対する処罰意思の撤回を指示した」とパク報道官は伝えた。文大統領は続けて「今後は、明白な虚偽事実を流布して政府に対する信頼を意図的に毀損し、外交的な問題に飛び火することがあり得る行為に対しては、少なくとも事実関係を正すという趣旨で、個別の事案に応じ慎重に判断して決める予定」だと述べた。

 これに先立ち文大統領は2019年、国会の噴水台前で自身とパク・ウォンスン前ソウル市長、盧武鉉(ノ・ムヒョン)財団のユ・シミン理事長、ホン・ヨンピョ元共に民主党院内代表の先祖が親日行為を行ったという内容などが書かれたビラを配布したK氏を、代理人を通じて告訴した。ビラの裏には文大統領を侮辱する多くの文言が記されていた。パク報道官はこの日「大統領は、本人と家族についてとても口にはできない嫌悪表現も、国民の表現の自由を尊重する観点で容認してきた。しかしこの件は、大統領個人に対する嫌悪と嘲弄を越えて日本の極右週刊誌の表現を無差別的に引用するなど、国の品格と国民の名誉、南北関係など国家の未来に及ぼす害悪を考慮して対応したもの」だとし、告訴を決めた背景を説明した。

 大統領が処罰意思を撤回した侮辱罪の告訴についての議論は、警察が捜査を終え、最近になり起訴の意見を付けて送検し、再び水面上に浮上していた。当初、大統領府はK氏の告訴事実を公開せず、ビラをまいたK氏が反省の意向もないという点を挙げ、処罰意思を撤回するのは難しいという立場だった。

 しかし参与連帯は3日に論評を出し「権力に対する国民の批判を侮辱罪で処罰するのは、文大統領がこれまで明らかにしていた国政哲学とも合わない」とし、告訴の取り消しを促した。昨年8月、「政府を非難したり大統領を侮辱する程度のことは、表現の範囲内として許容すべきだ。大統領に悪口を言って気持ちが晴れるのであれば、それも良いこと」だと述べた文大統領の発言と相反するという指摘だった。青年正義党も「独裁国家では大統領に対する侮辱は犯罪かもしれないが、民主主義の国では大統領という地位は侮辱罪が成立してはならない対象」だとし、「流布された内容がいかなるものだったとしても、大統領による市民への告訴は不適切だ」と主張した。

 文大統領は処罰意思の撤回を機に「国の品格と国民の名誉、国家の未来に悪影響を及ぼす虚偽事実の流布に対する省察の契機になることを願う」と明らかにした。大統領府関係者は文大統領が2年前の告訴を今回撤回する理由について「2019年のビラは大韓民国の大統領を北朝鮮の犬と嘲弄した、そのような度を越したビラだった。本当にひどい表現があったが、国家を運営する大統領として耐えるという意味」だと説明した。

イ・ワン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/bluehouse/993872.html韓国語原文入力:2021-05-04 17:05
訳M.S

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