中国当局が新型コロナ防疫成功と迅速な景気回復を基に、今年の経済成長率展望値について「6%以上」を提示した。国際社会の相次ぐ批判にもかかわらず、香港選挙制度改編案も具体的に公開した。
李克強・中国国務院首相は5日午前、首都北京の人民大会堂で開かれた第13期全国人民代表大会(全人大)第4回会議の開幕式の政府活動報告で「経済成長率は総合的指標であり、今年の成長率目標値を6%以上に設定したのは、経済運用の回復傾向を考慮したもの」とし「依然として少なからぬリスクと課題に直面しているが、経済が長期的に良い方向に進むという基本は変わることがない」と話した。中国は昨年、新型コロナによる不確実性を考慮して成長率展望値を提示しなかった。
李首相が明らかにした「6%以上」という成長率展望値は、多国籍信用評価社フィッチ(8%)や野村証券(9%)などの市場の予測はもちろん、国際通貨基金世界銀行(7.9%)の予想より低い数値だ。特に、昨年の成長率(2.3%)鈍化にともなう基底効果まで念頭に置くならば、新型コロナ事態以前の2019年(6%)水準に成長率展望値を低く設定したのは、相変らず世界経済を覆っている不確実性を意識したためと見られる。
ただし、雇用などその他の経済指標目標値は例年水準に戻した格好だ。李首相は、都市地域の新規雇用目標値を昨年の900万人から今年は1100万人以上引き上げ、失業率目標値も昨年の6%程度から今年は5.5%程度に下げた。消費者物価上昇率目標値も昨年の3.5%から今年は3%程度に引き下げられた。
財政運用からも変化の兆候が伺える。李首相は「マクロ経済政策の連続性と安定性」を強調し、「急に変えることはないだろう」と話したが、財政赤字目標値を国内総生産(GDP)比で昨年の3.6%から今年は3.2%に引き下げて、負債負担を減らすことにした。また、昨年1兆人民元(約16.6兆円)規模だった新型コロナ防疫関連特別国債を、今年は発行しないことにした。ただし、地方債の発行規模は3兆6500億人民元とし、昨年(3兆7500人民元)と同程度に維持される。
全般的な財政支出縮小基調とは異なり、国防予算は前年比6.8%増額した約1兆3553億人民元(約22兆円)規模を提示した。昨年より0.2ポイント増えた数値だ。ジョー・バイデン行政府の発足以後にも米中対立が激化することに備えた布石とみられる。李首相が「科学技術の自立・自強は国家発展の戦略的支え」とし、産業サプライチェーンの現代化と新興産業育成を強調したのも同じ脈絡とみることができる。
この日の開幕会議で全人大は、7番目の議案で「香港特別行政区選挙制度改革に関する決定草案」を上程した。官営の新華社通信の報道を総合すると、行政長官選挙人団の規模拡大▽選出方式変更▽立法議員選挙候補者資格審査権および立法議員一部直接選出権付与などが骨子だ。香港大学のヨハネス・チャン教授(法学)は香港放送(RTHK)に「選挙に出る候補者の資格を事前に審査するならば、選挙自体が無意味になる」と話した。