26日から始まる新型コロナワクチンの国内接種を控え、与野党が見苦しい政治攻防を繰り広げている。野党「国民の力」のユ・スンミン前議員が19日、フェイスブックに掲載した「アストラゼネカ(のワクチン)、大統領が最初に接種してこそ不信感を払しょくできる」という書き込みに対し、共に民主党のチョン・チョンネ議員が21日「国家元首が実験の対象なのか」と反論したことを受け、与野党議員らが相次いで「マルタ(丸太・第二次世界大戦当時、日本帝国陸軍731部隊が人体実験の被験者をマルタと呼んだことに由来)実験」など暴言をならべている。新型コロナの感染拡大を食い止めるために最も重要なワクチン接種が支障なく進められるよう力を合わせても足りないのに、消耗的な議論で国民の不安を煽るとは嘆かわしい限りだ。
政界は、国民の憂慮はものともせず、22日も攻防を続けた。国民の力のキム・ジョンイン非常対策委員長は「誰がどうやって最初に接種し、国民を安心させるか、責任ある位置にある人が自ら判断しなければならない」と主張した。「国民の党」のアン・チョルス代表は「アストラゼネカのワクチンに対する不信感や不安を解消するためなら、そして政府が承諾するなら、私が最初にワクチン接種を受ける用意がある」と話した。
国民の生命と直結したワクチン接種を政争の手段に利用するのはあってはならないことだ。ワクチン接種を総括する疾病管理庁はすでに65歳未満の療養病院・療養施設従事者を第一次接種対象者に決めた。明らかな過ちがない限り、疾病管理庁の計画に従うのが当然だ。韓国より先に接種を始めた米国や欧州など主要国も同様の手順で進めている。ワクチンに詳しくない素人が横やりを入れるのは大きな混乱を招く恐れがある。
このような点で、大統領が先に接種を受けなければならないという主張は不適切だ。ワクチンに対する不信感が例外的に高かったたフランスやイスラエルなどごく一部の国でのみ、大統領や関連省庁の長官が最初に接種を受けただけだ。一方、韓国では第一次接種対象者の94%が接種に同意した。国民がワクチン接種に積極的だということだ。こうした状況で、もし大統領が先に接種を受ければ、今回は“特恵”と攻撃されるのは目に見えている。「国家元首は実験の対象なのか」と対応したチョン・チョンネ議員の発言も度を越している。チョン・ウンギョン疾病管理庁長も「臨床試験を経て安全性と効果性が確認されたワクチンを接種するもので、実験の対象という表現は適切でない」と指摘した。
政界は「第1号接種」攻防を直ちに止め、計画通り接種が円滑に行われるよう協力すべきだ。