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「慰安婦」問題、ICJ付託案が30年経てようやく出てきたわけは?(後)

登録:2021-02-19 06:17 修正:2021-02-19 09:00
平和の少女像=ハンギョレ資料写真//ハンギョレ新聞社

国際司法裁判所付託への期待

 日本軍「慰安婦」被害者のイ・ヨンスさんは16日の記者会見で、「私はこれまでできる限りのことをしてきた」とし、「もはや方法がない。韓国政府が国際法で日本の罪を明らかにしてほしい。日本が過ちに気づき反省するよう国際司法裁判所(ICJ)の判断を受けてほしい」と訴えた。「日本軍慰安婦問題国際司法裁判所付託推進委員会」(以下推進委)側は、「慰安婦」制度の主体が日本政府という点を認めた1月のソウル中央地裁の判決を、日本政府が韓国国内の裁判所の判決にすぎないとして正当性を認めていないことから、権威あるICJに持ち込むことを提案した。また、この判決が「金銭賠償を命ずるにとどまり、日本の真の法的責任の認定、歴史教育への反映など被害者の人権救済は期待しにくい」という理由も挙げた。

 推進委側の法律検討を担当したシン・ヒソク博士(国際法)は「予断することはできないが、(ICJが)実体的に『慰安婦』制度が当時の国際法を違反した戦争犯罪として法的責任」を認める一方、「手続き的には個人賠償請求権は1965年の韓日請求権協定で放棄され、韓国裁判所は日本の主権免除を尊重しなければならない」と判断する可能性があると見通した。韓国の立場では被害者たちの個人賠償請求権は喪失するが、日本の法的責任は認められ、日本の謝罪、真相究明など法的義務が残るという主張だ。敗訴したとしても、「『慰安婦』制度に関する資料、証言などを過去(第二次世界大戦後、戦犯裁判である)ニュールンベルク裁判、東京裁判の時のように膨大な歴史記録で永久的に残すことができる」というは利点があると指摘した。シン博士は「韓国はICJで訴訟を起こした経験はないが、勝算がある」とし、2014年にオーストラリアが日本の過度な捕鯨を問題視して起こした「国際捕鯨取締条約違反」訴訟で日本が敗訴した事例や2019年4月に世界貿易機関(WTO)紛争解決機構が日本福島水産物輸入禁止関連事件で韓国勝訴した事例などを挙げた。

世界日本軍「慰安婦」メモリアルデーに迎え、2018年8月15日にソウル鍾路区旧日本大使館前で開かれた第1348回定期水曜集会の姿=キム・ギョンホ先任記者//ハンギョレ新聞社

国際司法裁判所への付託をめぐる懸念

 国際法の専門家らは、このようなアプローチに懸念や疑問を呈した。被害者は請求権協定にも個人賠償請求権が残っていることを前提に、日本の法的責任と賠償を要求してきたが、推進委の予測通りの判決が下された場合、国際司法裁判所の判断より“失うもの”が大きいと見ているからだ。

 キム・チャンロク慶北大学教授(法学)は今月16日、国際司法裁判所を通じて「慰安婦」制度が当時の国際法を違反した犯罪だという事実を確認したもらう代わりに、被害者の個人賠償請求権は請求権協定で放棄されて日本の主権免除が尊重されなければならないという判断を受け入れるなら、「弊害は実に深刻であろう」と懸念した。複数の法律専門家もこのような判断が下された場合、2018年の韓国最高裁(大法院)判決と1月のソウル中央地裁判決の意味を歪曲する結果をもたらすと警告した。「両裁判が請求権協定および国家免除を認めなかったため、国際法を違反している」という日本政府の主張を後押しする格好になり、これまで国内外で行ってきた努力を台無しにする恐れがあるという判断だ。また、日本政府の能動的な責任認定と謝罪という被害者の本質的要求は、この問題を国際司法裁判所に移しても解決されないという指摘もある。

 「慰安婦」被害者に対する歴史的事実はすでに国連をはじめとする国際社会の常識になっており、日本も一部認めたため、国際司法裁判所を通じて事実関係を認められなければならない段階ではないという点も、国際司法裁判所にこだわる必要がない理由に挙げられる。これに先立ち、「慰安婦」被害者問題は1994年、国際法律化委員会による「慰安婦・終わらない試練」報告書 (Comfort Women an unfinished Ordeal:『国際法から見た「従軍慰安婦」問題』に収録、日本政府の道義的、法律的責務を認める)▽1996年、国連人権委員会の「戦時における軍事的性奴隷制問題に関する朝鮮民主主義人民共和国、大韓民国および日本への訪問調査に基づく報告書」(クマラスワミ報告:日本軍慰安婦を『軍事的性奴隷』とし、日本の法的責任の認定)▽1998年、国連人権委員会差別防止と少数者保護小委員会の「現代的形態の奴隷制:武力戦争下の計画的レイプ、奴隷制、奴隷に近い状況」報告書(マクドゥーガル報告書:日本政府の個人賠償及び「レイプ所」の設置・監督責任者訴追を提起)だけではなく、国連女性差別撤廃委員会(1994年、2003年、2004年、2009年・日本政府の責任の認定と賠償などを要求)と 国連拷問防止委員会(2007年)、市民的及び政治的権利委員会(2008年)などからも確認されている。

 韓国の政府関係者および多くの国際法専門家たちが韓日間の紛争の国際司法裁判所への付託に懐疑的である他の理由は、独島(日本名・竹島)問題のためだ。日本は1950年代から独島問題の国際司法裁判所への付託を主張してきた。韓国政府が「慰安婦」など歴史問題を提起しようとすれば、日本は独島問題も一緒に付託すべきだと主張している可能性が高い。これまで独島をめぐる領土問題の存在を認めない韓国政府の立場からすると、大きな打撃になりかねない。16日、推進委の記者会見を見守った彼らの心の底には、被害者女性の利益に合致する結果の導出のための十分な検討と戦略的判断が先に成されなかったという残念な気持ちがある。

キム・ジウン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/politics/diplomacy/983461.html韓国語原文入力:2021-02-18 17:56
訳H.J

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