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6カ月ずつ細切れ雇用契約、見習工で40%充たし…サムスンは脱法・違法の“綱渡り”

登録:2019-06-18 23:15 修正:2019-06-21 08:31
グローバル・サムスン持続不可能報告書//ハンギョレ新聞社

 グローバル超一流企業として君臨するサムスン電子は、今や韓国だけの企業ではない。超国籍企業サムスン電子は、世界の人々にどんな姿に映っているのだろうか。サムスン電子で働く労働者は、サムスンに対してどう思っているのだろうか。特にサムスン電子の主要生産基地に浮上したアジア地域の労働者の暮らしと労働の現実はどうなっているのだろうか。この質問の答えを得るために、ハンギョレはベトナム、インド、インドネシアのアジア3カ国9都市を訪ねた。2万キロ余り、地球半周分を巡って136人のサムスン電子労働者に直接会って質問調査した。国際労働団体がサムスン電子の労働条件に関する報告書を発刊したことはあるが、報道機関としては韓国内外をあわせて最初の試みだ。10人の労働者に深層インタビューし、20人余りの国際経営・労働専門家にも会った。70日にわたるグローバル・サムスン追跡記は、私たちが漠然とは察しながらも、しっかり見ようとしなかった不都合な真実を暴く。真実に向き合うことは、そのときは苦痛かもしれないが、グローバル企業としてサムスンがブランド価値を高めるためには避けられない過程だと判断する。5回に分けてグローバル超一流企業サムスン電子の持続可能性を尋ねる。

5月14日午後、サムスン電子のベトナム・バクニン工場の労働者がバイクに乗って工場正門から退勤している=バクニン/チョ・ソヨン<ハンギョレTV>ディレクター//ハンギョレ新聞社

 サムスンは違法と便法の境を綱渡りし、アジアの青年たちを搾取していた。非正規職として雇用された青年たちは、正規職になる夢を追って身体が壊れるまで働いて、20代半ばで仕事場から追い出された。“超一流企業”を自負するサムスンの労働条件は“生存の最低線”だった。

 ハンギョレが、インド、ベトナム、インドネシアのサムスン電子工場を取材した結果、現地法とグローバル基準に反する違法・便法行為を多数確認できた。現地の工場で会った労働者は、自ら体験した最低賃金法と見習法の違反、強制労働および不当解雇、言葉の暴力などについて証言した。

手当を減らすために“細切れ契約”…最低賃金法にも違反

 サムスン電子のインドネシア・チカラン工場では、6カ月単位の細切れ契約が頻繁だった。7~12月までのシーズンに労働力を集中的に活用し、1年に一度の賞与金のように支給する宗教休日手当の支給を減らすためだ。現場の労働者は「他の外国系企業は1年単位の契約が一般的なのに、サムスンだけが6カ月以下の短期契約を結んでいる」と話した。チカラン工場は、年間180万台の携帯電話と家電製品を生産する内需型工場だ。

 工場の前でインタビューに応じた労働者は「技術職のエンジニアと管理者を除く多くの生産職が短期契約職」と話した。労働法上、契約職は「臨時的性格の業務」のみ可能だが、現場で会った多くの契約職たちは正規職と同じ生産ラインで仕事をしていた。DVDの生産ラインで“6カ月+6カ月”の契約を結び働いたヘルピン(仮名・23)は、「ラインで製品を生産した。物量が多い時は毎日超過勤務をし、週末にも働いた。疲れて倒れた女性労働者もいた」と話した。彼は契約期間が終わると、サムスンでは働けなかった。ヘルピンは「年齢が高いため契約延長にならなかった。23歳は、サムスンで仕事をするには高い年齢」と話した。

 現場の労働者と職業学校関係者の話を総合すれば、10代後半~20代初めの労働者は職業学校を経てサムスンに入社し、契約職として1~5年仕事をして契約解除される。20代半ばの契約職が10代後半の契約職に代替される構造だった。人口世界4位のインドネシアでは、仕事を求める青年があふれている。

サムスンが違反していた国別法律//ハンギョレ新聞社

 最低賃金法にも違反していた。インドネシア・チカラン工場で仕事をする契約職労働者は、産業別最低賃金も受け取れなかった。インドネシアの電子産業労働者は、産業別最低賃金(月463万2985ルピー、約3万5千円)を適用されるが、サムスンは正規職にのみこれを適用し、契約職にはこれより低い地域別最低賃金(月414万6126ルピー、約3万1千円)を支給した。インドネシア金属労働者連盟(FSPMI)は、パナソニックやサンヨーのような外資系電子会社は非正規職にも産業別最低賃金を支給しているが、サムスンだけがこれを守っていないと明らかにした。

 チカラン工場では、2011年前後に数百人の派遣(アウトソーシング)労働者が生産ラインに投入され、違法論議がおきた。繁忙期に一日4時間以上の超過勤務をしても2時間の手当だけ認定し、労働者の反発を買ったこともあった。

超一流企業の最低線、“見習工の正規職転換遮断”

 見習法(徒弟法)の弱点を突いて、10代後半~20代初めの青年労働を絞り取る事例もいたる所で見られた。取材地域のうち見習制を最も悪らつに活用している所はインド・ノイダ工場だった。2020年にはサムスンが年間に生産する5億3千万台のスマートフォンのうち1億2千万台がここで生産される。文在寅(ムン・ジェイン)大統領が昨年7月、サムスン電子のイ・ジェヨン副会長、インドのナレンドラ・モディ首相とともに新工場竣工式に参加したサムスンの核心工場だ。

 インドでは、職業教育と実習を目的に見習工を許容している。しかし、ノイダ工場では実習でなく製品の生産のための実戦に見習工を投じていた。インドの見習法は、見習工に業務量に応じて給与を支給したり生産量に基づく奨励金を支給することを禁止しており、これに違反した場合には懲役6カ月または罰金刑に処すると定められている。

インドネシア・ブカシのある職業学校の正門。この学校を出た多くの生徒たちがサムスンに契約職として就職している=ブカシ/キム・ドソン<ハンギョレTV>ディレクター//ハンギョレ新聞社

 ハンギョレが会った前・現職の見習工たちの話を総合すれば、製造工程によって10~40%が見習工で埋められていた。彼らは職業学校に通う10代後半の生徒から大学低学年の20代初めの青年だった。ノイダ工場でフィーチャーフォン(2G携帯電話)の組立に従事した見習工のタル(仮名・21)は「生産量の圧迫が本当に激しかった」と話した。フィーチャーフォンの場合一日1600個、4Gスマートフォンは800個が割り当てられたが、目標量に達するまで超過勤務をしたという。見習法は、見習工の超過勤務を禁じている。3カ月ほど見習工として働いたチュノプ(仮名・21)は、割当量を満たせなかった度に、管理者から「仕事をしたくないならすぐに辞めろ」という暴言を吐かれたと話した。具合が悪くても休暇を使うことさえ許されなかった。正当な休暇使用を阻むことも違法だ。

 インドの見習工たちは、9千~1万ルピー(約1万4千~1万6千円)の月給を受け取ると話した。準熟練労働者の基準月額最低賃金1万5400ルピー(約2万4千円)に遥かに至らない(インドでは、熟練度により最低賃金が変わる)。「正規職になれる」という“希望拷問”で“1+1年”の見習をした労働者も多かったが、ほとんどが正規職にはなれなかった。インドでは、契約職雇用2年が過ぎれば正規職への転換、または契約を解除しなければならないが、サムスンは作業分野を変えるという便法で見習工を再雇用していた。インド労働者教育センターは、サムスン電子の見習工の正規職転換率は数%にすぎないと推定した。

 インドネシアとベトナムのサムスン電子工場の職員も「見習工が生産ラインに投入されたことがある」と話した。1年未満の短期雇用なので、正確な人数は把握できなかった。これらの国でも見習工を生産ラインに投じることは違法だ。インドネシアの労働団体リップス(LIPS)のファフミ所長は、「他のグローバル企業と比較しても、サムスンの労働搾取は非常に悪らつだ。海外工場がある地域でインターンシップやアウトソーシングのような非正規労働力をひどく絞り取っている。サムスンのこのような悪い戦略を他の企業がまねたりもする」と話した。

 サムスンは、アジアの青年たちに苛酷な労働条件を提供していた。2016年、サムスンが発表した「移住労働者ガイドライン」に明示された海外労働者の人権と労働権を保護するという約束と「国際連合(UN)企業の人権履行指針」 「経済協力開発機構(OECD)多国籍企業ガイドライン」 「国際労働機構(ILO)労働者基本権宣言」など国際規範を徹底的に遵守するという宣言にも反する。

インド、インドネシア、ベトナム/オク・キウォン、イ・ジェヨン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/898251.html韓国語原文入力:2019-06-18 07:35
訳J.S

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