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金日成の銅像の横にまで「市場を許可」…東大門市場の2倍の規模も

登録:2019-01-22 09:41 修正:2019-02-06 07:53

市広場が2003年「総合市場」に合法化 
数が急増して500カ所前後と推定 
咸鏡北道清津郡の水南市場が最大 
平壌は統一通り市場が最大 
 
品目別・卸し・小売りと機能を分け 
当局、「取り締まりから管理に政策変更」 
革命史跡近隣まで市場を合法化 
専門家「市場化はもう戻れない変化」

2017年6月19日、北朝鮮の平壌にある普通江デパートの文房具の陳列台の前で、ドレスを着た子どもが様々な品物を見ている=平壌/AP聯合ニュース

 クイズ.1)北朝鮮でもっとも大きい市場は? 2)平壌(ピョンヤン)でもっとも大きい市場は? 3)北朝鮮最大の衣類卸売市場は?

 咸鏡北道清津市(チョンジンシ)の「水南(スナム)市場」がもっとも大きい。床面積だけでもソウルの東大門(トンデムン)市場の2倍だ。1万7000店舗にのぼる売り場ごとに1人ずついたとしても市場の商人が1万7千人余りになる。

 「革命の首都」と呼ばれる平壌直轄市には30カ所の「総合市場」があるが、楽浪(ナクラン)区域の「統一通り市場」がもっとも大きい。東大門市場より大きい。

 最大の衣類卸売市場は平安南道平城市(ピョンソンシ)の「玉田(オクチョン)市場」と清津の水南市場だ。玉田市場は北朝鮮最大の衣類生産基地だ。ソウルの東大門や南大門(ナムデムン)市場の周辺に家内工場が立ち並んでいるように、玉田市場周辺の村も「衣類生産基地」の役割を果たしている。脱北民らは「玉田市場に1日10万人以上が集まる」と語る。水南市場も数年前、高価な日本製の衣類生産設備を「金主」たちが導入し、玉田市場の独歩的地位を脅かすライバルとして急浮上している。金主は“金の持ち主”を意味する俗語だ。資本家階級の萌芽だ。

平壌直轄市の主要総合市場//ハンギョレ新聞社

 3つの市場はいずれも“合法”だ。北朝鮮当局が2003年、「内閣決定27号」と「内閣指針24号」を通じて、違法だった「市広場(チャンマダン)」を「総合市場」と名付けて合法化した。取引品目が農産物に限定された農民市場(非常設10日市)とは違い、品目制限が事実上ない「総合」市場だ。市広場は1990年代、「苦難の行軍」の時期に配給システムが崩壊し、人民が急速に拡散させた自救的“違法”市場をいう俗語だ。

 現在、総合市場がいくつあるのかは北朝鮮当局が公表しておらず、正確に確認することは難しい。統一研究院は、衛星写真や脱北民の証言を交差分析し、総合市場は少なくとも404カ所あると2016年12月に発表した。国家情報院の推定は439カ所(2017年2月27日国会情報委)だ。今は500前後という推定が多い。2010年には200カ所あまりだったが、急激な拡散ぶりを見せている。

市場の拡散に劣らず、注目すべき部分は、総合市場の機能分化、専門化の傾向だ。

 まず「全国区卸売市場」。市場ネットワークのハブである清津の水南市場、平城の玉田市場、平安北道新義州(シンウィジュ)の「南中洞(ナムチュンドン)市場」(旧彩霞市場)が代表的だ。南中洞市場は中国の丹東と隣接する北朝鮮最大の貿易・流通・商業都市である新義州において、中国輸入品の全国流通通路となる。水南市場は内部に「工業品市場」「肉類・水産物市場」「古着市場」「雑貨市場」など品目別に分化した専門市場を有している。港町であり中国・ロシアの国境に近いことが長所だ。平壌は北朝鮮最大の「消費市場」であり交通の要地だが、「革命の首都」らしく出入検閲が厳しい。平壌のすぐ上に位置し玉田市場がある平城市が、北朝鮮最大の卸小売流通中心地として立地を固めたのはそのような背景からだ。

 第二に、道単位の市場ネットワークのハブとなる市場だ。葛麻(カルマ)市場・栗洞(ユルトン)市場(江原道元山市)、恵山(ヘサン)市場(両江道恵山市)、外龍(ウェリョン)市場(慈江道江界市)、沙浦(サポ)市場(咸鏡南道咸興市)などがそうだ。いずれも道の所在地にある。

 都市内でも市場の機能分化の傾向が見られる。例えば、平壌市では「統一通り市場」と「中区域市場」が高価な輸入品を主に扱う一方で、東平壌沙洞区域の軌道電車の終点(松新駅)にあり交通至便な「松新(ソンシン)市場」は「平壌市民が生活必需品を買う時に愛用する代表的総合消費市場」だ。

 北朝鮮当局の市場に対する態度は、「取り締まり・統制」から「管理・活用」に重心が移りつつある。市広場に垣根を設け、出入り口を1つだけにしていた「統制型」から、屋根を設置し複数の出入り口を設ける「管理型」を経て、スーパーマーケットやデパート式の建物に総合市場を作る方式へと進化してきた。

 最近の歩みはさらに大胆だ。玉田市場がある平城市周礼洞(チュレドン)の大通り交差点周辺につくられた露天市場は、垣根もつくらずに合法化した。ある脱北民は「市場管理所があるから当局が認めた総合市場」だと話した。これよりさらに劇的な変化は咸興市の「錦沙(クムサ)市場」だ。この市場は、北朝鮮最大の客席数を誇る咸興文化芸術劇場のすぐそばに立った。道党舎を含む権力機関と金日成(キム・イルソン)・金正日(キム・ジョンイル)の銅像など革命史跡が立ち並ぶ「咸興の心臓部」だ。市場の変化を長らく追跡してきた統一研究院のホン・ミン北韓研究室長は「以前は想像もできなかった立地であり、市場に関する北朝鮮の国家政策が変わりつつあることを裏付ける」とし、「市場はもはや『仕方なく許可する恥ずかしい空間』とは認識しないという意味」と指摘した。

 統一研究院は、2016年基準で総合市場の商人が少なくとも110万人(109万2992店舗の売り場あたり商人1人基準)と推定した。北朝鮮の平均世帯員が4人(2008年、人口センサス)であることを考慮すれば、440万人前後、つまり全人口2500万人(2017年基準、統計庁)の18%が、総合市場で生計を立てていることになる。当局の取り締まりを避け、総合市場周辺、各地の路地や道路周辺で「バッタ広場」を開く人民までふくめれば、その数はさらに増える。(総合)市場は「北朝鮮経済の糸口」(統一研究院)だ。

 市場(化)は人民の「現金収入創出」と「食糧・生活必需品など財・サービスの供給」を通じ、「住民の生計維持に決定的に寄与」し「国家財政も拡充」している。北朝鮮経済の専門家であるヤン・ムンス北韓大学院大学教授が「市場化はもはや不可逆性を確保したとみることができる」と診断するのも、このような理由による。。

イ・ジェフン先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/defense/879329.html韓国語原文入力:2019-01-22 07:08
訳M.C

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