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「裁判らしい裁判を受けてもらいたかった」4・3再審「公訴棄却」担当検事

登録:2019-01-18 21:54 修正:2019-01-19 08:58
チョン・グァンビョン済州地検検事=済州/コ・ハンソル記者//ハンギョレ新聞社

 「4・3受刑人に裁判らしい裁判を受けてもらいたかった」

 17日、済州(チェジュ)地裁刑事2部(裁判長チェガル・チャン)は、済州4・3当時の受刑人18人が請求した再審で、事実上無罪の趣旨(公訴棄却)判決を下した。その一カ月前の先月17日、チョン・グァンビョン済州地検検事(39・司法研修院40期)は、裁判所に「公訴棄却判決をしてほしい」と要請した。捜査過程での明白な誤りがあらわれた再審事件でも、有罪求刑を下した以前とは異なる姿だった。

 宣告後、ハンギョレと会ったチョン検事は、その理由として「裁判らしい裁判」を挙げた。彼は、パク・クムビッ(36・41期)、イ・サンフ(32・弁護士試験2回)検事らと過去2年余りにわたり済州4・3再審を担当した。

 チョン検事は、済州ではない“陸地”出身だ。「恥ずかしいけれど済州4・3をよく知らなかった。歴史小説や放送、映画の素材で接しただけで、強い関心はありませんでした。裁判を準備して真相調査報告書と史料を検討し、理念と公権力という名の下に罪のない多くの方々が犠牲になったことを知りました」

 チョン検事は「実体なき裁判」との戦いだったと話した。約70年前、済州島民2530人が不法拘禁と拷問を受け、まともな手続きも守られなかった軍法会議(軍事裁判)を経て獄中生活をしなければならなかった。しかし、受刑人名簿の他には関連記録は残っていなかった。それでも裁判所は再審決定を下し、検察は抗告しなかった。記録が残っていない責任を被告人に転嫁することは望ましくないとの判断だった。

 チョン検事らは、受刑人の公訴事実が具体的に何か、果たして実体があるのかを確認しなければならなかった。検察の捜査官、記録研究士などと2泊3日で「陸地」に出張した。陸軍本部、国家記録院ソウル記録館など10カ所余りを検索したが、記録は残っていなかった。当時軍事裁判に関与した法務官も亡くなった後だった。「受刑人は、自分たちがどんな容疑で拘禁され、拷問を受けなければならなかったのか、なぜまともな裁判なしに懲役刑を受けなければならなかったのかを知りたいと幾度もおっしゃいました。記録がないという理由だけで手を離してしまうことはできませんでした」

 チョン検事らは、このような理由で受刑人に対する「被告人尋問」を進めたと話した。有罪を立証し、処罰を受けさせることも検事の仕事だが、無念を晴らすことも公益の代表者としての検事の仕事だからだった。チョン検事は「一度も国に無念を訴えたことのない受刑人が、これまでの苦痛を話す機会を与えたかった」と話した。陸地の刑務所に連行される船内で息子を失い、その遺体を警察に渡さざるをえなかったオ・ゲチュンさん(93)の話を聞く時は「公権力によってこれらの人々が体験した苦痛の深さは計り知れないと思った」と語った。

 「涙で耐え忍ばれた人々にとって、裁判所の今回の初の判決が慰労になればうれしい」。チョン検事は裁判所の判断に敬意を表わした。

済州/コ・ハンソル記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/878976.html韓国語原文入力:2019-01-18 17:12
訳J.S

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