彼の年は今年60歳。靴を作って40年になる。30歳の頃、工場で靴を作っていてプレス機械に押しつぶされて中指を切断。それだけではない。平たくなった親指、刃が回る機械で割れてしまった爪まで。靴職人の手は実に悲しい運命にあるようだ。
「タンディ」の靴を作る製靴労働者が、先月26日から本社の3階で工賃単価2000ウォン(約200円)引き上げと直接雇用を要求して立てこもり中だ。デパートでは30万ウォン(約3万円)で売れる靴を一足作れば、製靴労働者に入る分は6500~7000ウォン(約650~700円)。8年間微動だにしなかった。タンディは20カ所の下請け業者と契約を結んで靴を作る。そのうち5つの工場が今回のストライキに参加した。労働者はタンディの職員でなく、個人業者の“小社長”だ。名ばかりの肩書に過ぎない。タンディの指示でその会社の靴だけを作りながらも、4大保険はもちろん退職金は一銭もない。本社に目をつけられでもしたら仕事も減る。仕事が多い時は夜明けに出勤して夜明けに退勤、仕事がない時は自動的に無給休暇となる。労働する“社長”の権利は「特殊雇用」という奇妙な単語のもとに縛られてしまった。
タンディのチョン・ギス代表は「匠の精神で名品靴を作る」と自慢してきた。製靴労働者も自分の手で作る靴に自負心を感じてきただろう。娘の結婚式の朝まで靴を作って婚主席に駆けつけたという靴職人の話を聞けば、充分に察することができる。しかし、その匠の精神に資本が付けた価格は7000ウォン。立てこもり中の窓の外に突き出した労働者の足は、はだしのままだった。職人の価値は無視したまま、名品だけをもてはやす世の中。 職人を尊重しない会社がどうして名品を作るなどと言うことができようか。労働者でも、人間が先だ。
納品価工賃単価は、底部と甲革それぞれ1300ウォン引き上げ、特工費可能▽正当な理由なしに仕事を減らして製靴組合員を差別することはしない▽労組および下請け業者と、労働条件・仕事の量・工賃単価・事業者登録証廃止などを決める協議会を上・下半期それぞれ1回以上必ず開催する▽2018年4月4日から現在まで発生した事について提起した民・刑事訴訟を双方が取り消し、今後も提起しない、など。