本文に移動

「堕胎罪廃止」の請願に応えた大統領府、憲法裁の雰囲気も変わった

登録:2017-11-27 05:31 修正:2017-11-27 07:05
11月24日、ソウル世宗文化会館の前で「皆のための堕胎罪廃止共同行動」が主管した「堕胎罪廃止決議への汎市民社会団体共同記者会見」で女性市民団体の会員たちがプラカードを掲げ堕胎罪廃止と自然流産誘導薬の導入を求めている=キム・ソングァン記者//ハンギョレ新聞社

 大統領府が26日、来年に政府レベルで妊娠中絶(堕胎)関連の実態調査を8年ぶりに行うことにしたのは、それだけ妊娠中絶合法化をめぐる議論が熱いからだ。立法権のない大統領府は、ひとまず実態調査を基盤として堕胎罪の廃止に関する意見を集約する方針を固めたものと見られる。「堕胎罪」とは「妊娠した婦女が薬物を利用したり、その他の方法で自ら中絶した時には、1年以下の懲役または200万ウォン以下の罰金に処する」という刑法第269条1項を指す。

 チョ・グク民政首席は「胎児の生命権と女性の自己決定権、二つのうち一つだけを選択すべきというゼロサムでは、議論を進展させることは難しい。両方とも韓国社会が守るべき大切な価値であるため」とし、“慎重なアプローチ”を強調した。しかし、チョ首席が言及した資料と事例からすると、大統領府の意中が堕胎罪の廃止や大幅な緩和の方に傾いていることが窺える。チョ首席は「この問題を論議するためには、妊娠中絶がどれほど行われており、原因は何かをまず確認しなければならない」とし、2010年の政府調査資料に言及した。同調査によると、推定中絶件数は年間約16万9000件だが、合法的な妊娠中絶手術件数は1万8000件で、6%に過ぎない。不法妊娠中絶による起訴件数も年間10件に止まっている。チョ首席は35カ国の経済協力開発機構(OECD)加盟国のうち、妊娠中絶を認めている国が29カ国で、全体の80%に達するという統計も提示した。

チョ・グク民政首席=大統領府ユーチューブ・アカウントからキャプチャー//ハンギョレ新聞社

 同時に彼は、交際した男性と最終的に別れた後、妊娠を発見した場合▽別居または離婚訴訟の状態で、夫の子供を妊娠したことを発見した場合▽失業・闘病など経済的困難のため、子どもの養育が完全に不可能な状態で妊娠を発見した場合を取り上げ、「現在、この三つの場合でも妊娠中絶をすれば犯罪となる。ローマ法王フランシスコが妊娠中絶について『新たな均衡点を見つけなければならない』とおっしゃっただけに、今回の請願をきっかけに、韓国社会も新たな均衡点を見つけることを望んでいる」と述べた。保健福祉部の関係者は「5年ごとに堕胎の実態調査を行う計画だったが、2015年には予算に反映されず、実施できなかった」とし、「来年には2億ウォンの実態調査計画案が政府予算案に含まれている」と話した。

 韓国は現在原則的に妊娠中絶を禁止し、近親相姦や性的暴行、妊婦の健康に深刻な脅威にある場合などに限って、妊娠中絶を認めている。憲法裁判所は2012年、「胎児は親とは別の生命体であり、人間に成長する可能性が高いため、生命権が認められなければならない」として、裁判官4対4の意見で刑法の堕胎罪に対し合憲決定を下した。憲法裁には今年2月、この条項に対する憲法訴願が再び提起された状態だ。

 しかし、憲法裁の雰囲気は5年前に比べてすっかり変わった。合憲の決定の際に審理に参加した裁判官8人はいずれも任期が終了しており、27日に就任するイ・ジンソン憲法裁長官は、国会人事聴聞会で「(妊娠後の)一定期間内には中絶を認める方向も可能だ」と述べた。キム・イス憲法裁判事も「妊娠初期段階で、望まない妊娠をした場合のように、女性の自己決定権を優先すべき場合もある」とし、堕胎罪の規定を見直さなければならないという意見を示しており、カン・イルウォン、アン・チャンホ、キム・チャンジョン憲法裁判事も「胎児の生命保護と女性の自己決定権が調和されなければならない」という見解を明らかにした。

ソン・ヨンチョル、キム・ミンギョン、キム・ヤンジュン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/bluehouse/820758.html韓国語原文入力:2017-11-26 22:05
訳H.J

関連記事