「脱北ブローカーに騙され、間違って韓国に入国した」として、北朝鮮への送還を要求してきた北朝鮮離脱住民キム・リョンヒさん(48)が、再び拘束される危機に直面した。警察が国家保安法違反の疑いでキムさんの逮捕令状の申請を検討するなど、捜査に拍車をかけているからだ。キムさんと彼女を支援する市民団体は14日、キムさんの送還を求める記者会見を開いた。
現在、大邱(テグ)地方警察庁保安捜査隊は、キムさんを国家保安法の「鼓舞・讃揚及び潜入・脱出」の疑いで捜査している。キムさんは昨年4月、自分のフェイスブックのアカウントに太陽節記念動画と金日成(キム・イルソン)万歳の歌など北朝鮮体制を称賛する書き込みをした疑いを受けている。警察はキムさんが2015年のハンギョレとのインタビューで述べた「金日成主席は私の生みの親のような方」とした発言にも、同じ容疑が適用されている。キムさんが昨年2月、在韓ベトナム大使館を訪れて「北朝鮮に送ってほしい」と要求したのも、国家保安法に違反したものと警察は見ている。
警察関係者は「キムさんの表現は国内法上、捜査せざるを得ないもの」としたうえで、「キムさんに今月13日まで出頭するよう3回も出席要求書を送ったが、出席を全て拒否したため、逮捕令状の申請を検討している」と話した。キムさんは2015年4月、中国駐在の北朝鮮領事館に電話をかけた疑い(国家保安法の会合・通信)などで、懲役2年に執行猶予3年を言い渡された。当時も、金さんは「北朝鮮に抑留の事実を伝え、救助を要請するためだった」と主張したが、裁判所はそれを認めなかった。
35の市民団体で構成された「北朝鮮海外レストラン従業員の企画脱北疑惑事件の解決に向けた対策会議」は同日午前、大統領府近くの青雲洞(チョンウンドン)住民センター前で記者会見を開き、「事実上強制抑留されているキム・リョンヒさんを北朝鮮に送還せよ」と要求した。キムさんも「国会で離散家族の再会を推進することを決議したと聞いた。政府が離散家族の血の滲むような叫びと苦しみを真に解決する意志があるのか疑わしい」として、自分の送還を要求した。
統一部は北朝鮮への送還はできないとの立場を固守している。統一部関係者は「キムさんは韓国国民になるという誓約書を書いており、強制的に韓国国籍が付与されたわけでもない。北朝鮮に送還する法的根拠がない」と話した。
キムさんは14日、ハンギョレとの電話インタビューで「韓国国民になるという誓約書を書かなければ、一生閉じ込められて暮らすことになると、国家情報院の調査官が強要した。韓国でしばらく暮らしてから、後悔して北朝鮮に帰らせて欲しいと要求しているわけではない。私は強制抑留された北朝鮮の公民だ。板門店(パンムンジョム)を通じて故郷に帰らせてほしい」と主張した。