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半月・始華工業団地に広がる“不法派遣”

登録:2015-01-19 22:31 修正:2015-01-20 07:35
14日午後、仁川市富平区のモベイス前で、イ・ウンミ氏(29・前列右)が一緒に不法派遣を認定されたキム・ゴニ氏(24・前列中央)とともに記者会見を開き、正社員の直接雇用を要求している。金属労組仁川支部提供。 //ハンギョレ新聞社

 仁川北部雇用労働支庁(雇用支庁)が不法派遣と認めたキム・ゴニ氏(24)の15カ月は、製造業における不法派遣の素顔を如実に見せている。 キム氏は「アルバ天国」のホームページに掲載された「6カ月働いたら正社員に転換」という派遣会社の採用公告を見てモベイスで働くようになった。 2013年2月からこの会社でサムスン電子の携帯電話ケースを作っていたキム氏は、3カ月後に仕事を辞めたが、同年11月、再び同じ会社で働くことになる。 製造業であるモベイスの直接生産工程で派遣労働者が働くことは「派遣労働者の保護等に関する法律」(派遣法)違反だ。 しかしキム氏は「派遣」が何かを知らなかったし、モベイスと派遣会社は「一時的・間欠的に人員確保の必要がある時には、3カ月~6カ月まで雇用できる」という派遣法の例外条項を“悪用”していた。

 労働契約を結んだ(派遣)会社ではなく第3の会社(使用事業主)の指揮・監督を受ける派遣労働は、労働条件や解雇などと関連して使用事業主の法的責任を問うことが難しいため、“最も悪い雇用”と呼ばれる。 このような事情から、派遣法は派遣対象業務を32に厳しく制限しているが、現実には有名無実だ。 その上、派遣の禁止されている業種でも、会社が派遣法の「一時的・間欠的事由」を名分に派遣労働者を雇用し、雇用労働部に事後報告さえすれば済む。「一時的・間欠的事由」が具体的に何かを明示した規定がなく、管理・監督も不十分なためだ。 キム氏は最初の派遣会社が「サインだけすればいい」と言って差し出した契約書に署名しており、その後も別の派遣会社が持ってきた辞職書と契約書に機械的に署名しただけだ。 労働条件を告知されたことはない。

「一時的事由の際は許容」の法悪用
1~6カ月の短期契約
韓国政府、管理監督不良が蔓延に一役買う

 モベイスで生産職として働く労働者250人余りの多くは、キム氏の状況と変わりない。 キム氏とともに不法派遣を認められたイ・ウンミ氏(29)も、5つの派遣会社と6カ月、6カ月、1カ月、1カ月、5カ月の単位で労働契約を結んだ。 19カ月間にイ氏の法律上の雇用主が4回変わったけれども、実際に彼女が働いた所は一貫してモベイスだった。 キム氏とイ氏など3人は、夏の休暇の時もらえなかった週休手当4万1680ウォン(約4500円)を要求したあと、昨年10月27日に突然「派遣終了」の通告を受けた。

 事実上“解雇”された3人は昨年11月、モベイスを雇用支庁に派遣法違反の疑いで告発した。 キム氏は「自分の権利を主張しただけなのに、非正規雇用という理由であまりにも簡単に切られて悔しかった」として「会社に戻って正社員として働きたいし、私たちみたいな人が増えてはいけないと思い告発を決心した」と話した。

 すると、モベイスは彼らが働いていた組立部の業務を外注化してしまった。 外注化により使用者が変われば、モベイスが不法派遣の直接雇用義務を避けられるという法の盲点を悪用したわけだ。 使用者がモベイスから外注業者に変わることを拒否した派遣労働者12人は、昨年12月に追加で会社を告発した。 追加告発した12人は短くは5.5カ月から長くは32カ月まで平均6カ月の短期契約で、派遣会社だけを変えながら働いてきた。

派遣労働者の31%が「一時的事由」
半月(パンウォル)・始華(シファ)工業団地は97%で深刻
「派遣法廃止・正社員化が正解だ」

 さらに大きな問題は、このような現実がモベイスに限定されないというところにある。「一時的・間欠的事由」を口実に、派遣が許容されていない業種に雇用された派遣労働者の割合が2010年の23.8%から2013年には31%へと確実に伸びている。 彼らの大半は任務が「その他製造関連単純労務」だが、その割合が増加傾向にある(2010年65.5%→2013年73.3%)。韓国非正規労働センターと安山(アンサン)市非正規職労働者支援センターが2013年に発表した「派遣労働実態調査報告書」によれば、京畿道安山・始興(シフン)市の“半月・始華(パンウォル・シファ)工業団地”の派遣労働者の97%が「一時的・間欠的事由」で製造業の工場で働いている。 この地域には2012年基準で全派遣労働者の16.8%が働いている。 半月・始華工業団地では50人未満の小企業がそれぞれ92.7%、96.5%に上る。 中小零細工場を中心に派遣が禁止された製造業で不法派遣労働者が広範囲に働いていることを証明する数値だ。 調査に参加した安山非正規職労働者支援センターのキム・ジンスク政策チーム長は「規模の大きな企業は不法派遣であると知りながら人件費を減らし使用者責任を避けるために派遣労働者を雇用し、零細企業は物量が一定でない上に求人が困難なために派遣労働者を雇用する」として、「工場が正規職採用をしない状況で、職に就くためには労働者たちは派遣会社を訪ねていくしかない」と指摘した。

 製造業派遣禁止が事実上空文化している状況で、まずは管理・監督の強化が必要だが、根本的には派遣の撤廃を本気で考えなければならないと専門家はアドバイスする。 放送通信大学のユン・エリム教授は「“悪い雇用”である間接雇用を合法化した派遣法を廃止し、常時・持続的な業務の直接雇用・正社員化の原則に立ち返らなければならない」として「製造業の不法派遣を減らすためには先ず、政府が意志を持って管理・監督を強化しなければならない」と指摘した。

 しかし、雇用労働部のイム・スンスン雇用差別改善課長は「全ての事業場を常時管理・監督するには人員が足りない」として「法的に曖昧な一時的・間欠的事由の基準を具体化して厳しく管理する計画だ」と話した。

キム・ミンギョン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/economy/economy_general/673721.html 韓国語原文入力:2015/01/15 14:01
訳A.K(2648字)

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