韓国全域を攻撃できる威嚇効果
韓米日軍事訓練に反発
韓国に交渉を迫る圧迫用との解釈も
北朝鮮のミサイルによる挑発がますます大胆になっている。北朝鮮は13日未明、南北軍事境界線の20km北側からミサイル2発を発射した。同軍事境界線の40km北側だった9日の発射より、さらに休戦ラインに近づけて撃ってきたことになる。
13日、韓国合同参謀本部の関係者は、「北朝鮮が13日午前1時20分と1時30分の二度にかけ、東海(日本海)海上に向けて短距離弾道ミサイルを発射した」として、「射程距離は約500キロで、スカッド系の発射体と推定される」と話した。この関係者はさらに、「今回のミサイル発射地点は軍事境界線から20キロ余り離れた開城(ケソン)の北側」であるとし、「北朝鮮がこれほど軍事境界線に近づいてミサイルを発射した例は記憶にない」と話した。
北朝鮮によるミサイル発射は今年に入り14回あり、中・短距離発射体97発が発射された。今年2月末から3月末にかけ、一ヵ月以上にわたり300ミリ新型ロケット砲、フロッグ、スカッド、ノドン ミサイルなどを撃った後、しばらく動きは静まったが、6月末に再び300ミリロケット砲とスカッドミサイルを相次いで発射している。
北朝鮮が最近、ミサイル発射の秘密性を大幅に強化したことも分かった。韓国軍当局者は、「北朝鮮は通信のセキュリティーを強化したようだ。今までとは異なり、韓国軍の傍受能力を意識して、ミサイル発射に関連する通信をまったく行っていない」と語る。韓国側が構築した「キル・チェーン(Kill chain)」(北朝鮮の核・ミサイル攻撃の兆候があれば先制攻撃するシステム)を無力化するための試みではないかとの解釈も出されている。
ますます大胆になっていることも特徴的だ。 3月には元山(ウォンサン)と平安南道(ピョンアンナムド)の粛川(スクチョン)から発射したが、最近は休戦ライン付近まで接近して撃っているためだ。 軍当局者は「軍事境界線付近から射程距離500キロのミサイルを発射したのは、韓国のどこでも攻撃できると威嚇する効果を狙ったようだ」と話した。
注目すべきは、北朝鮮が最近、「国防委員会特別提案」などを通じて対南和解メッセージを発信すると同時に、軍事挑発を続けている点だ。 軍当局者は「北朝鮮が“我々の提案を受け入れよ”と軍事的に挑発している」と話す。さらに、韓米日の海上合同訓練のため原子力空母ジョージ・ワシントンが釜山に入港したことに対する反発の意味も含まれていると分析される。北朝鮮は12日、国防委員会政策局スポークスマン談話で、ジョージ・ワシントンの釜山入港を「核による恫喝」と非難した。
また、北朝鮮体制内部の引き締めの意味があるという解釈も出されている。弾道ミサイル発射後、金正恩(キム・ジョンウン)労働党第1秘書が参観していた事実を公開する方法で、金正恩の「軍掌握」を印象づける効果を狙ったというものだ。キム・ドンヨプ慶南大学極東問題研究所教授は、「対南メッセージとともに、金正恩が軍と安保を重視しているというメッセージを国内に伝えようとする意図に思える」と話した。
韓国政府は北朝鮮のミサイル発射に対して、国連安保理北朝鮮制裁委員会に意見書を提出する方向で米国と協議中だという。韓国政府は北朝鮮による最近のスカッドミサイル発射が「弾道ミサイル技術を利用したすべての発射」を禁じた国連安保理の対北朝鮮制裁決議に違反したとみている。しかし、安保理が短距離ミサイルについて、これまでに特別な対応措置を取ってこなかったことを考えると、北朝鮮制裁委員会が招集されたとしても、実効性のある追加制裁が出せる可能性は低そうだ。
パク・ビョンス先任記者 suh@hani.co.kr