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[社会 ズーム・イン] 逆行する警察官職務執行法

登録:2013-11-12 21:54 修正:2013-11-13 07:46

去る10日午後‘2013全国労働者大会’で警察の水大砲(放水銃)が登場した。 東大門(トンデムン)歴史文化公園駅の四つ角で、放水銃に撃たれた労働者300人余りは寒さに震え自主的に解散した。 放水銃の発射時間は10秒に過ぎなかったが、これは警察の集会・デモに対する‘強硬鎮圧’基調強化と受け止められている。 警察の放水銃発射は8月15日の国家情報院大統領選挙介入糾弾ろうそくデモ隊に撃って以来3ヶ月ぶりだ。

 水大砲が初めて導入されたのは1989年だった。 イスラエルから放水車両二台を持ってきたが、大きさがあまりに大きくデモ現場では使いにくかった。 1年を超えて倉庫に保管されていたが、1990年の国政監査で野党議員は「なぜ高い価格で買い入れて使わないのか」と問い詰めた。 80年代に街頭を掌握した催涙弾よりは、少なくとも放水銃がよりマシではないかという野党の抗弁だったわけだ。

 1991年3月28日、ついに水大砲がデモ鎮圧現場に登場した。 ソウル大生3000人余りが総学生会発隊式を終えた後、校門前で警察と正面対峙した。 石と火炎瓶、こん棒と催涙弾が炸裂するデモ現場に突然の水の洗礼が学生たちを襲った。 警察の‘新武器’と受け止められた。

 水大砲の導入は逆説的に言えば民主化運動の結果だった。‘ソウル大生パク・ジョンチョル拷問致死事件’に触発された1987年6月抗争とその年6月に警察が撃った催涙弾に当たり亡くなった‘イ・ハニョル死亡事件’等が警察官の職務執行乱用を防ごうという要求に集約され警察官職務執行法が作られた。 <ハンギョレ>は1988年7月16日付で "平民、民主、共和など野党3党は15日、警察官職務執行法単一案を確定、16日中に国会に提出することにした。 野党単一案は不審検問、同行要求、凶器所持調査の場合、返答拒否権または調査拒否権があることを警察官が事前に知らせることを義務化した。 また、検問や調査はいかなる場合にも1時間を超えられないようにした" と報道した。 ‘殺人的な鎮圧’を防ぐためであり、その結果として水大砲も導入されたのだ。

 以後、文民政府を経て国民の政府と参与政府を迎え、警察は催涙弾を捨てて集会・デモを‘保護’する基調に転換した。 国民の政府時期である1999年、集会・デモ管理対策を施行した警察は‘無催涙弾原則’基調の下に婦警機動隊、秩序維持ライン(ポリス ライン)の活用、交通要員を中心に警察部隊を配置した。 鎮圧服の代わりに勤務服を着て、デモの鎮圧よりは管理する概念を導入した。 更に参与政府時期である2003年に警察は自律的集会デモ保護指針を始め、秩序維持ライン運用改善および実効性確保(2004年),集会現場安全管理総合対策(2005年)を次々と発表した。 集会現場での人権保護と安全管理強化のための努力だった。

 歴史は李明博政府になってから反対に動き始めた。 警察による集会対応体系が過去へ回帰した時点は2010年だった。 ‘無催涙弾原則の管理’と‘自律的集会・デモ保護方針’の時代に逆らって、李明博政府時の警察は‘合法・不法・暴力集会にともなう差別的警察力配置’へと強硬化した。 1981年に導入され有害性論難のために2007年に4万9103リットルが廃棄されたCS催涙液は、2009年に2137リットルが再び使われもした。 結局、CS催涙液は2011年に全て廃棄され、それぞれ2008年、2010年に導入されたカプサイシン催涙液と新型PAVA催涙液が使用されている。

 <警察学概論>は "2010年集会示威パラダイムの転換を明らかにし、集会・デモを‘合法と不法’の2分法的思考で‘平和・不法・暴力’に区分して、合法促進的警察力配置を行っている" と記録している。 ‘合法デモ’と言っても警察は‘警察官機動隊中心の機動部隊を前面に配置して解散措置および現場検挙’をする方向で原則を立てた。 警察庁関係者は「‘合法促進、不法必罰’の(李明博政府時の)概念を朴槿恵(パク・クネ)政府でも受け継いでいる」と話した。

 警察の集会・示威対応原則の変化により、警察官職務執行法も変わってきた。 盧泰愚政府時に制定された後、一度鎮圧強化側に改定された警察官職務執行法は、1999年に装備使用基準を強化し、警察の恣意的解釈を遮断する方向に変わった。 元来催涙弾に対してのみ適用された‘日時・場所・対象・現場責任者・種類・数量などを記録し保管しなければならない’という規定が、噴射機・武器などに拡大した。 その後2006・2011・2013年に小幅の改定がなされたが大きくは変わっていない。

朴槿恵政府になってデモ鎮圧強化
デモ保護方針時代から逆行
装具使用 報告書義務規定 廃止
誤乱用 増加傾向…人権侵害 憂慮
手錠関連被害 陳情事件 最多
"鎮圧装備使用規定 法制化すべき"

 警察官職務執行法の根本的問題は警察装備と装具使用に関する部分が大統領令に任せられているということだ。 武器、警察装具、催涙剤および催涙剤発射装置、鑑識器具、海岸監視器具、通信機器、車両、船舶、航空機など、警察装備の種類は規定しているものの使用基準については大統領令で規定するようになっている。 特に武器類に比べてデモ現場などで使用頻度の高い手錠・捕縄・警棒・盾などの警察装具はより一層恣意的に使われやすい。 去る10日に改定された‘警察装具使用報告書’義務規定の廃止も同じ脈絡だ。 警察庁は内部訓令‘警察官職務執行法による職務執行時の報告手続き規則’を改定、スタンガンを除く警察装具の使用時、勤務日誌にのみ記録するようにして別途の報告書義務規定は削除した。

 "それぞれの装備をどんな状況でどんな方法で、どんな手続きを通じて使わなければならないという規定が不在だ。 結局この空白を満たすのは警察の判断だ。 半額授業料、無償保育など市民の多様な要求を表わす広場である集会の場合、申請した瞬間から合法と不法を分ける主体が警察だが、集会を鎮圧できる装備までとても簡単に使えるようにすることは問題だ。 特に水大砲や催涙液などは装備というよりは準武器に属し、危険であるほど統制が必要だ。" チェ・ウンア人権団体連席会議公権力監視対応チーム活動家の指摘だ。

 装備の危険性は警察官が発射したティーザーガン(拳銃型電気衝撃器)に撃たれて失明の危機に処した女性被疑者の事例からも分かる。 去る4月24日、大邱市(テグシ)達西区(タルソグ)のある食堂で酒に酔ったK(37・女)氏は警察が誤って発射したティーザーガンに当たって失明の危機に処した。

 一線警察署で最も頻繁に使われる手錠は、国家人権委員会(人権委)設立以後、人権侵害陳情事件の中で単一要素としては最も陳情件数が多い事例に挙げられている。 人権委統計を見れば、2001年11月25日以後2013年02月28日までに受け付けられた人権侵害陳情事件数は5万3183件で、この内 警察の業務遂行過程で手錠使用により被害をこうむったという事件数は1312件(2.5%)だ。 単一要素としては最も頻度が高く誤乱用事例が深刻と言える。

 粗末な新装備導入手続きも問題だ。 現在、新装備導入時には警察庁で警察装備諮問委員団の審議を受けている。 しかし警察装備諮問委員団委嘱に関する規則などが別になく、新装備を導入する時に安定性審査の客観性と公正性が担保されていない。 2011年9月の国政監査でもこのような問題が指摘された。 国会行政安全委員会所属だった民主党前チャン・セファン議員は、当時の国政監査で 「警察装備諮問委員団は2009年末に委嘱され現在まで会議が開かれたことはなく、警察装備と関連して諮問は電話で行われているのが実情」とし「その構成もまた該当機能の局長、課長、係長など警察官で構成されており、今後民間専門家を参加させる方案を講じなければならない」と指摘した。 2010年11月ソウル主要20ヶ国首脳会議(G20)の時、警察庁が導入しようとしたが政府、野党までが保留して失敗に終わった音響大砲もまた新装備導入の粗末な体系のために起きた寸劇だった。

 人権委もまた、鎮圧装備使用規定を法で具体化することを勧告しているが、警察は勧告を受け入れようとしない。 人権委は2008年ろうそく集会当時に使われたデモ鎮圧用散水車の使用基準に関し、法的根拠を用意しろと勧告したが警察は反対に‘20m以内の近距離デモ隊に向けて直接散水砲(水大砲)を撃ってはならない’という規定を削除した。 現在、水大砲の使用距離規定はない状態だ。

 こうした中で去る10日午後、ソウル市庁前広場で‘2013全国労働者大会’を終えた労働者たちは東大門歴史文化公園駅交差点で水大砲車両2台が撃った水に撃たれた。 奇襲寒波の中で労働者300人余りが水に撃たれて方向を変えてチョン・テイル橋の方へ向かった。 集会および示威に対する‘強硬鎮圧’基調を強化するという警察の信号弾であるわけだ。

パク・ユリ、パン・ジュノ、キム・ミヒャン、イ・ジェウク、パク・スジ記者 nopimuli@hani.co.kr

https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/610932.html 韓国語原文入力:2013/11/12 20:23
訳J.S(3913字)

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