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在日同胞 一世 ‘垣根の外の悲しい人生’ 忘るなかれ

登録:2009-03-22 00:30

原文入力:2009-03-20 午後 07:21:39
在日三世 写真家 李朋彦氏 ‘ルーツ探し’
日本縦断して会った一世 100余人 記録
“関心を受けられなかった弱者たちの口述 生涯史”

←18歳で夫と共に日本へ渡ってきたホ・マルチョンおばあさん。夫の死後、清掃,皿洗いなどをしながら12年間一日13時間以上働いた。2001年当時78才だったおばあさんが一人で切り盛りする小さな焼肉屋に座っている。 東アジア提供

<在日同胞一世, 記憶の彼方>
李朋彦著・ユン・サンイン訳/東アジア・1万8000ウォン

“お前はなぜ年をとったか。私も知らない間に間に年をとった。みんな死んでしまった。私一人だけ残して。韓国に行きたい。子供たちを連れて”(キム・ウィラン・当時83)

“日本にきて泣けるだけ泣いた。日本にきて、子供たちを連れて古着を買って、日本にきて海に捨てられた豚内臓肉でホルモン屋をして…、日本にきてすでに71年が過ぎた。”(ユ・ウジョム・92)

“私は日本と朝鮮の歴史を見てきた。役に立つと思えば人々が集まって。使い道がないと思えば知人でさえ遠くへ行ってしまうと。”(ムン・ケボン・88)

“生まれた故郷に帰れたら学校や山川草木が出迎えにきてくれそうな気がします。私たちは流れ者暮らしです。雪原をさまよう草木と同じです。私たちは旅人です,旅人…”(イ・ヒョンダル・86)

四十をすぎた頃、在日同胞3世写真作家 李朋彦(50)氏は‘私は誰か’という質問に囚われた。彼はカメラを持ち2001年から約5年にわたり北海道から沖縄まで縦断し100人を越える在日同胞一世に会った。亡くなった祖父母と祖先に生きてまた会った気分だった。訪ねて行く度に食事をご馳走になり、お小遣をもらったりもしたし、歴史をさらに勉強してから来いと叱られもした。一日一人ずつ半日,一日かけて生きてきた話を聞き記録し写真に残した。<在日同胞一世, 記憶の彼方>はイ氏がこのようにして会った在日同胞一世,91人の話と写真を本に構成して出したものだ。

←<在日同胞一世, 記憶の彼方>

大部分の在日同胞一世たちは1930年代から40年代初期、16や20歳の幼い齢で徴用,徴兵,強制連行によって、または仕事を探すために自ら玄海灘を渡った。先に渡っていった夫を追って闇雲に密航船に乗ることもした。当時日本で朝鮮人として生きるということは底辺の人生を意味した。日本語で話せれば少しはマシだったが、さまざまな肉体労働ができることの全てだった。何も持っていなかった朝鮮人たちは屑鉄や板切れを集めて売ったり、朝鮮飴,密造酒(焼酎)を作って売り、日本人が捨てる牛や豚の内蔵肉を拾って‘ホルモン焼き’‘焼肉屋を開いた。風俗事業だと日本人たちが忌避するパチンコ屋を開いて時には金を儲けることもあった。米軍空襲に死ぬ思いをしたり、広島と長崎では被爆の惨状を目撃した。苛酷な歴史の流れに家族が北韓,韓国,日本と散り散りになることも一度や二度ではなかった。時には家族の生死すら分からないまま人生を終えていった。15才で日本に来たピョン・ポンソクおばあさんは話す。「日本にきて両親兄弟たちとただの一度も会えなかった。今は生きているのか死んだのかさえも分からない。」故郷に置いてきた家族と離れて過ごし、日本で新しく家庭を設けた人々も多かった。何年か前に、韓国に置いてきた長男に会ったキム・ジンハ(81)おじいさんは息子から心の奥底からの言葉は一言も聞けなかった。

著者は取材中に下関に住んでいる在日同胞一世の叔母に母親とともに会った。涙で生きてきた話を聞かせた叔母は77才だった当時元気だったが3年後に亡くなった。現在著者が会った在日同胞一世の中で4名中1人が亡くなった。“一世が生きているうちに”在日同胞の歴史を記録しなければならなかったという著者の話は現実に近づいている。

本を訳したユン・サンイン教授(漢陽大・日本言語文化学科)は「在日韓国人は韓国と日本という二つの国民国家の垣根の外に投げこまれた人々」として「深刻な貧困と差別と無関心を人生の与件として受け入れなければならなかった在日同胞一世たちは自らについて語る機会を得られない典型的な下位主体であった」と説明する。したがって本は「階層的弱者の口述生涯史」になる。全身で時代の荒波を乗り越えてきた在日朝鮮人の話は時々は小説や映画に作られもした。だが<在日同胞一世…>が聞かせてくれる91人の生々しい肉声は、今は人生を達観したような表情や、語ることもなく過ぎた歳月をシワで物語る彼らの顔と共にどんな小説や映画より深い余韻を残す。「とても幸せを感じるようになるとこれでも良かったのかと考えるようになった」(チェ・ナムジョ・82)

キム・イルジュ記者pearl@hani.co.kr

原文:https://www.hani.co.kr/arti/culture/book/345292.html 訳J.S