李在明(イ・ジェミョン)大統領は「嫌悪表現(ヘイトスピーチ)」の根絶に向けた韓国政府の積極的な取り組みを求めた。法務部など所管部署には刑法改正など立法的措置も指示した。
李大統領は11日、ソウル龍山(ヨンサン)の大統領室で開かれた国務会議で、「韓国社会の一部で人種、出身、国などによる時代錯誤の差別と嫌悪が横行している」とし、「ヘイトスピーチに対する処罰条項を速やかに設け、虚偽・捏造された情報の流布行為を根本的に遮断し、厳しく処罰することに総力を傾けなければならない」と述べた。これに先立ち、李大統領は9月9日の国務会議で反中デモについて、「あれのどこが表現の自由なのか。ただの騒乱だ」と述べ、嫌悪を煽る集会とデモに対する関係当局の積極的な対処を注文した。以後、キム・ミンソク首相は集会・デモに対する綿密なモニタリングを指示し、「必要であれば『集会およびデモ(示威行為)に関する法律』(集示法)と『警察官職務執行法』などに基づき厳しい措置を取るべき」と述べた。
この日の国務会議ではヘイトスピーチ防止に向けた立法的対応案も議論された。李大統領は「デモの過程で嫌悪的発言や誹謗中傷が飛び交っており、現行の集示法を改正するのが速やかで効果的な方法」だというチョン・ソンホ法務部長官の報告に対し、「集示法と刑法の改正問題はドイツや海外の立法例を参考にし、短時間で速やかに行うことが望ましい」と述べた。李大統領はただし、「もし刑法改正をすることになれば、『事実適示名誉毀損罪』もこの機に同時に廃止することを検討してほしい。事実を話したことで名誉が毀損されたなら、民事で解決すべき事案だ。刑事処罰するようなものではない」と付け加えた。
李大統領は、チェ・ドンソク人事革新処長が「刑事処罰の有無と関係なく、ヘイトスピーチをした公務員に対しては、その軽重を調べたうえで懲戒を通じて厳重に責任を問う」と報告すると、「それは必ず必要だと思う。迅速に推進すべきだ」と述べた。さらに「先日、ある機関長が『白い顔、黒い顔』このような発言をしたが、ありえないこと」だとし、差別発言で非難を受け最近辞意を表明した大韓赤十字社のキム・チョルス会長のことにも触れた。
市民団体では、ヘイトスピーチの根絶に向けた李大統領の取り組みについて評価する一方、包括的差別禁止法を制定しない限り、この問題を解決するのは不可能だと口をそろえた。大林洞(テリムドン)などで「嫌中デモ」に対する反対運動を行ってきた「境界人のモクソリ(「役割(モク)」と「声(モクソリ)」の意味)研究所」のパク・トンチャン所長は「最近ヘイトスピーチ禁止法を制定しようとする動きがあるが、差別禁止法という根本的な対策があるのに、なぜヘイトスピーチ禁止法という応急策で防ごうとするのか疑問だ」と語った。差別禁止法制定連帯のモン(活動名)共同執行委員長は「ヘイトスピーチ規制法のような個別法が作られる前に、差別禁止法という基本土台が必要だ」とし、「差別禁止法について語らず、ヘイトスピーチ規制法が肯定的に機能するようにするのは不可能だ」と指摘した。