「温かい電気毛布とふかふかの布団の中で好きなゲームをしたいというのが無理な要求なのですか!」
「全国家で横になっている連合」の旗を掲げて舞台上に立ったチ・スンホさん(24)の発言に、集会参加者たちはふき出した。しかし、その笑いは次のチさんの発言に静まりかえった。「家で横になってばかりいたい私も立ち上がって弾劾を叫んでおり、女性、青少年、性的マイノリティー、障害者、高齢者など、様々な社会的弱者がやって来て、声を一つにして弾劾を叫んでいます。ですが、与党(国民の力)は何をしているのですか」。チさんは続けた。「今日の国民向け談話をご覧になった方々はご存知だと思いますが、これ以上弾劾を先送りしてはなりません。明日すぐにでも引きずり下ろさなければなりません」
国民の力の議員たちの尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領弾劾案の採決への不参加以降、毎日のように行われている「内乱首魁尹錫悦即時弾劾! 市民ろうそく」集会には、12日にも応援グッズやろうそくを手にした6万人(主催側推計)の市民が集まった。少女時代の歌「Into The New World」を一緒に歌い、「尹錫悦を逮捕せよ」、「内乱同調やめろ」と叫んだ。この日午前に尹錫悦大統領が発表した29分間の国民向け談話に対する怒りと衝撃が、歌とスローガンの間に満ちていた。
市民たちは、尹大統領の談話を細部に至るまで批判した。「恩平(ウンピョン)区民でありノンバイナリートランスジェンダー、フェミニスト」と自己紹介したパク・ソジンさんは、「尹錫悦大統領は談話で『スパイ支配勢力に支配されたいのか』と言っていたが、『大韓民国は民主共和国であり、すべての権力は国民から生じる』という憲法を知らないようだ。私たちは誰かに支配される対象ではなく、固有の価値観と信念、政治的主体性を持つ主権者だ」と述べた。ソウル鍾路区(チョンノグ)から来たキム・ジョンソプさん(61)も、「自営業をしているが、商売もうまくいかず、経済を立て直すには今週中に絶対に弾劾を済まさなければならないと考えて出て来た。今日の談話を見てすごく腹が立った。今、尹錫悦大統領自身の味方はいないのに、一体誰と共に闘うというのか。あきれる。国民の力も同じだ。今週中に終わらせなければ、全員が国民の審判を受けることになるだろう」と述べた。
尹大統領の非常戒厳が招いた混乱で生計と日常が麻痺したことに不満をぶちまける人もいた。手編みのろうそくのマスコットを持って水原(スウォン)から参加した自営業のチャン・ジヨンさん(39)は、「政治についてはよく分かっているわけではないが、コロナ禍よりもはるかに生計が脅かされている。朴槿恵(パク・クネ)元大統領の弾劾の時は遠い話に感じられたが、今回は非常戒厳の翌日にお客さんが2人しか来なかったため、深刻さが肌で感じられて集会にも来た」と話した。
集会に参加した市民たちは、あちこちでカイロや応援グッズなどの物品を配り合い、力づけ合った。ある市民は自費で「弾劾コーヒーケータリングカー」を持ち込み、参加者に無料でコーヒーを提供した。全国公務員労働組合も1000人分の蒸し餅を用意して参加者たちに配った。全公労の関係者は「誰もが共に民主主義を正そうと努めており、少しでも役に立ちたいという気持ちで餅を用意した」と話した。