本文に移動

[文前大統領インタビュー]「村がデモで覆われた時、平和な本屋を考えた」(1)

登録:2023-01-16 06:41 修正:2023-01-16 08:45
文在寅前大統領=ハンギル社提供//ハンギョレ新聞社

47年間出版一筋だったハンギル社のキム・オンホ代表が昨年末、平山(ピョンサン)村を訪れ、文在寅(ムン・ジェイン)前大統領に会った。ひたすら「本」をテーマにした3時間に及ぶインタビューを掲載する。

 文在寅前大統領は昨年5月10日、5年の任期を終え、慶尚南道梁山市河北面芝山里平山村(ピョンサンマウル)に帰郷した。私は本好きの文前大統領にわが社が出版した本を届けたかった。彼の書斎も見てみたかったし、読書遍歴を聞きたかった。国土の山河が赤く染まる昨年冬のある日の午後、訪問した。文在寅前大統領は1400年の古刹、通度寺(トンドサ)が位置した霊鷲山(ヨンチュクサン)の麓にある平山村で、50世帯100人余りの住民と共に暮らしている。

 文前大統領は在任当時も様々な本の読後感を(ソーシャルメディアなどを通じて)公開してきた。退任後も様々な本を勧めており、韓国歴史研究会の会員約70人が10年にわたって共同執筆した『市民の韓国史』もその一つだ。「国定教科書の波紋を踏まえ、国家主義的解釈を排除し、客観的に歴史を叙述した、市民のための歴史書」だとその理由を説明した。

-いつも本を手放さないですね。在任時と違って退任後は読書ももう少し自由になったと思いますが。

「気兼ねなく本を読むようになりました。退任後に私が読んだ本の一部を勧めたりもします。在任中はどうしても仕事もあるし、私の好きな小説などは読めず、国政の参考になるような本を読んでいました。私たちは印刷世代じゃないですか。一種の活字中毒というか、いつも本と一緒にいると心が落ち着きます。昼寝をする時も本を枕にして寝ると眠りやすいというか(笑)」

-最近惹かれるテーマを教えてください。

「今後、世界がどこに向かっていくかを洞察する本、第4次産業革命が世界をどのように変化させるのか、新型コロナウイルス感染症という新しい感染症が私たちの生活をどのように変えるのか、私たち皆が懸念している気候危機、このようなテーマの本を在任当時から読んでいます」

-今や科学はもちろん、人文・社会科学の志向と論点も変わってきています。若者たちに本とは何かと聞かれたらどう答えますか。

「好奇心ですね。行ったことのない場所に対する好奇心、未知の世界に対する知的好奇心です。この好奇心を満たしてくれるのが読書ではないかと思います。人生観と世界観、自分のアイデンティティを作っていく過程が本を読む行為ではないかと思います」

-本を読む政治勢力の政治と、本を読まない政治勢力の政治は異なるようです。

「韓国の国家社会が民主化する過程を見てもそうです。日帝強占期(日本による植民地時代)の親日附逆、解放後の独裁と権威主義、この権威主義を支える分断体制、この権威主義から形成された既得権勢力の考え、このような現実に対する批判なしに韓国社会の民主化は不可能だったのです。本を読んでいる方々が、本当に韓国社会の民主化のために先頭に立っていました。本は民主主義を具現化する力だと思います」

-出版の現場で本を作りながら実感しています。1980年代は偉大な本の時代だったと。本を書いて、作って、読む、その知的・理論的省察と実践が韓国社会を変化させる力だったと思います。

「そうです。その時代に集中的に出版された人文・社会科学の本を私たちはたくさん読むことができました。その本格的な始まりが『解放戦後史の認識』(ハンギル社)ではないかと思います。その後、批判的知性を盛り込んだ社会科学の本と共に、韓国の歴史を新しい問題意識で研究する作業が進められ、本として出版されましたね」

-子どもの頃の読書についてお話を聞きたいです。高校まで釜山(プサン)で過ごしましたね。

「子どもの頃、みんな貧しかった時代なので、本を読みたくてもなかなか手に入れることができませんでした。私が最初に読んだ本は姉の教科書でした。私より3つ年上なんですが、国語や社会の教科書に面白い文章がたくさん載っていましたよね。自分の教科書を早く読み終えて、姉の本を読んでいました。家に本がないから、そうやって読むしかなかったですが、それでも楽しかったです」

-私は田舎の中学を卒業してから釜山の高校に進学しましたが、学校周辺に本屋が多くて驚きました。その年、5・16クーデターが起き、戦車が市内のあちこちで見られました。その戦車が怖くて、避けて入ったのが宝水洞(ポスドン)の本屋通りでした。

「私も行きました。高校生になって参考書を買わなきゃならないのですが、新しい参考書は高くて、古本屋に行けば安く買えましたから。当時は光復洞(クァンボクトン)の夜市の露店にも古本がたくさん並んでいました。大河小説などを定価の数分の1で売っていました。『三国志』『列国志』のような大河小説を買って読みました」

-高校生の時、私は「思想界」を線を引きながら読みました。

「私は『思想界』世代ではないのですが、学校の図書館で読んだりもしました。1972年に大学に入ってから李泳禧(リ・ヨンヒ)先生の本に出会いました。李泳禧先生の『転換時代の論理』を読んで深い衝撃を受けました。私の人生に最も大きな影響を及ぼした一冊です。李泳禧先生のもう一冊の本『偶像と理性』も読みました」

-釜山で人権弁護士として活動していた時代はような本を読みましたか。

「社会科学の本を主に読みました。1980年代は学生をはじめとするいわゆる時局事犯が量産されていた時代でしたね。批判的な問題意識の本を所持したり読んだといって、拘留したり拘束したりしました。彼らを弁論するためには、問題になる本を読んでみなければなりませんでした。時局事犯たちと一緒に本を読んだわけです」

(2)に続く

キム・オンホ|ハンギル社代表 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/politics_general/1075786.html韓国語原文入力:2023-01-16 02:42
訳H.J

関連記事