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京畿道、コロナ軽症者は自宅で治療…「社会の危機受容性」がカギ

登録:2021-08-17 09:59 修正:2021-08-17 12:09
京畿道「自宅治療」拡大施行からひと月 
 
京畿道「ホームケア運営団」現場 
200人台の自宅治療者に24時間対応 
子どものいる家庭のみに制限適用していたが、 
1カ月前から成人1人世帯に適用拡大 
 
持続可能な医療対応のため実験中 
「デルタ変異株で、軽症管理への転換を要求 
不足する医療資源の拡充、最適化が必要」
16日、京畿道庁1階にある「京畿道新型コロナホームケアシステム運営団」の事務所=京畿道庁提供//ハンギョレ新聞社

 13日午後、京畿道水原市(スウォンシ)の京畿道庁1階にある「ホームケア運営団」の事務所では、一瞬の静寂もなかった。10人余りの看護師は電話の受話器を肩と耳の間に挟んだりヘッドセットをつけて、家にいる新型コロナ患者の症状を電話で確認するのに余念がなかった。

 「咳、痰、鼻水、鼻づまり、嘔吐、下痢、食物摂取不良、排尿回数の減少、呼吸困難、胸郭陥没、鼻のひくつき、無呼吸、チアノーゼ、意識変化、だるさ、けいれん、悪寒、頭痛、のどの痛み、筋肉痛、嗅覚消失、味覚消失、その他の症状はありますか?ああ、症状はないんですね」

 午後2時20分頃、看護師のパン・ジョンピルさん(31)は30代の男性に受話器越しに30秒にわたり、新型コロナウイルス感染症の症状を一文字ずつはっきりと尋ねた。この男性は前日に陽性判定を受けたが、生活治療センターに入所する代わりに自宅で治療を受けるという意思を保健所に伝えた。4分間の電話の末、パンさんは「こちらは24時間運営しているので、薬を服用しても症状が好転しなかったり、呼吸困難な緊急事態が発生したら、すぐにこの番号にかけてください」と言った後、受話器を置いた。午前8時に出勤したパンさんは、この日一日で45~50回ほど電話をかけた。他の看護師たちも、患者が食事をちゃんと取れているか、コロナの症状はどうか、憂鬱さを感じていないかなどを絶えず質問した。

 京畿道は7月16日から、満49歳以下の成人のうち、無症状・軽症の患者で1人暮らしのため他の家族への感染のリスクがない場合、自宅で治療を受けられるよう「自宅治療」を拡大して施行している。これに先立ち、中央防疫対策本部(防対本)は昨年12月、「コロナ自宅治療手引書」をまとめ、ケアの必要な満12歳以下の子どもやその保護者が感染した場合に限り、自宅治療を認めていた。ただし、子どもと保護者いずれも基礎疾患があるなど重症化する可能性が高い高危険群の要件に該当しないという条件がつく。これを受けて各市・道は状況に合わせて導入し、京畿道も今年3月から施行していたが、先月から拡大適用をはじめた。

 自宅治療者は、自宅に隔離された10日間、京畿道が31の市・郡と共同で運営するホームケアシステムを通じて、1日に午前・午後の2回ずつ電話相談を行う。症状が悪化した場合、医師との非対面診療を経て薬の処方を受けたり、症状が重い場合は病院に搬送される。運営団には看護師15人が勤務し、京畿道内の8カ所の協力公共病院の専門医が診療に参加している。

 今月に入り、京畿道内の新規の自宅治療者は毎日、少ないときで約20人、多いときは40人以上ずつ増えている。今月10日には管理中の自宅治療者が250人だったが、13日には285人と最も多い数字を示した。患者全体に占める自宅治療者の割合も、対象を子どもがいる家庭に制限していた3月には0.64%だったが、自宅治療の拡大が始まった今年7月には3.55%、8月には13日までに6.38%に増えた。

 これは持続可能なコロナ対応体系のためという点で注目される。いわゆる「3T」(検査・追跡・治療)戦略を根幹としたこれまでの「K防疫」では、軽症・重症を問わずすべての感染者を施設に隔離して治療する。ウイルスの伝播を遮断するための隔離と、患者の状態が悪化するのを防ぐための治療が一緒に行われているということだ。

 しかし、イスラエルや英国など国外の事例でも見られるように、ワクチン接種率が高まっても感染者は増え続ける可能性がある。このため、社会的距離措置(ソーシャル・ディスタンシング)で感染者数の統制に焦点を絞るのではなく、致命率と重症率を中心として防疫体系を調整すべきだという論議が本格化している。これはある程度感染者数が増えることを前提とする。第4波が広がり、1日の新規感染者数が2000人を超えた韓国も、このような防疫転換を念頭に置くとしたら、特定時点ではすべての感染者を生活治療センターなどの施設に隔離することが難しくなる。隔離と治療を分離し、無症状患者と軽症患者は自宅治療に回し、医療サービスが必要な患者を中心にコロナ対応体系を再編することを積極的に検討しなければならないということだ。

 ホームケア運営団長である京畿道医療院安城病院のイム・スングァン院長は、「13日に京畿道で自宅治療中の人は285人まで増えたが、これは地方自治体が運営する生活治療センター2カ所が収容できる規模」と説明した。実際には、非首都圏の場合、大邱(テグ)・釜山(プサン)・慶尚南道など一部地域を除けば、地方自治体が運営する生活治療センター1カ所で収容できる人数は75~166人程度で、感染者の規模がさらに大きくなった場合、施設を追加で確保する負担が大きい。イム院長は「必要だと感じた時に議論を始めるのでは対処が遅くなる」とし「自宅治療は今の時点で不足している医療資源を迅速に増やすために必要な効率化・最適化の戦略」と強調した。

 専門家は、自宅治療を定着させる上で必須な要件として「社会の危機受容性」を挙げている。自宅で治療を受けるからといって患者が放置されるのではなく、隣の家に無症状・軽症の患者が住んでいるからといって町内が危険になるわけではないということを、十分に知らせることが必要だということだ。このほか、自宅治療の管理に必要な保健所の人員拡充なども行われなければならない。

 一方、京畿道は9月初めに人材開発院の体育館に30人を収容できる規模の「自宅治療連携短期診療センター」を開設することにした。移動型陰圧病棟を設置し、自宅で治療を受けていた軽症患者が必要であれば1~2日ほど入院し、医師との対面診療が受けられるようにするためだ。対面診療がなかなかできない自宅治療と、病院移送・入院を前提とした従来の治療方式の短所を補完する努力だ。

ソ・ヘミ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/health/1007919.html韓国語原文入力:2021-08-17 07:19
訳C.M

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