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エントランスまで80メートル追いかけられた深夜の恐怖…韓国の裁判所は「無罪」

登録:2021-05-06 06:05 修正:2021-05-06 08:11
女性追いかけ、住居侵入容疑で起訴された30代男性に無罪 
裁判所「共用玄関の扉前は居住空間ではない」 
「ストーキング処罰法では処罰できる可能性も」…9月から施行 
ゲッティイメージバンク//ハンギョレ新聞社

 深夜、アパートの共用玄関前まで女性を追いかけ、住居侵入の容疑で裁判にかけられた男性に対し、韓国の裁判所が無罪を言い渡した。共用玄関前は住居空間とみなせないという理由からだ。今年9月から施行される予定のストーキング処罰法が、現行法の空白を埋め、こうした住居侵入や性犯罪未遂を適用しにくい「追いかけ」行為まで処罰対象になるかどうかに関心が集まっている。

 5日の本紙の取材を総合すると、ソウル中央地裁刑事9単独のチョン・ジョンゴン判事は、住居侵入容疑で起訴されたA氏(32)に無罪を言い渡した。A氏は昨年9月未明、ソウル江南区(カンナムグ)の路地で帰宅途中の女性Bさんを見かけ、約80メートルを追いかけて、アパート1階の共用玄関の扉前まで行ったとして、裁判にかけられた。この共用玄関はアパートの駐車場と隣接していたため、検察は「A容疑者が建物の駐車場を越えたのはBさんの住居の侵入に当たる」とし、A氏を同容疑で起訴した。

 しかし、裁判所は「A氏がBさんの住居に侵入したということが合理的な疑いの余地なく証明されたとみることはできない」とし、無罪を言い渡した。最高裁判所(大法院)の判例によると、住居侵入罪の「住居」には建物や周辺の土地が含まれているが、土地の場合でも「外部の人が勝手に出入りできないという点が客観的に明確に現れてこそ」住居侵入が成立する。ところが、今回の事件では、Bさんの住むアパートの共同玄関がある1階の駐車場には外部の車が出入りしたり、歩行者が入ってくる場合もしばしば発生する開放された空間だという点が受け入れられた。裁判所は「この事件の駐車場が部外者の出入りが制限されるという事情が客観的に明らかになったとは考えにくい」と判断した。

ゲッティイメージバンク//ハンギョレ新聞社

 男性が女性の自宅まで追いかけたり、付きまとう行為は、性犯罪や強盗などほかの犯罪の事前行為として行われる場合が多いが、犯罪容疑を適用するのが難しく、軽い処罰で終わるケースが多い。昨年2月、ソウル東部地裁は、知らない女性の自宅を突き止め、塀の上に上って内部をのぞき見た容疑(住居侵入)で起訴された40代男性に対し、無罪を言い渡した。被告が上った塀は隣の建物との境界に過ぎず、「住居」には当たらないというのが理由だった。

 2019年5月、女性の家まで追いかけてドアを叩き、家に入ろうとした「新林洞(シンリムドン)強姦未遂事件」について、C被告(32)は住居侵入で懲役1年の実刑を言い渡されたが、強姦未遂は無罪の確定判決を受けた。最高裁は昨年6月、「C被告が強姦を図ったという強い疑いがある」としながらも、現行法上の意図だけでは処罰できないという原審の判決を受け入れ、住居侵入のみ有罪と判断した。

 専門家らは、このような判決が現行法の限界によるものだと指摘する。現行法上、加害者の行為を性犯罪未遂のように相対的に量刑が重い犯罪に適用するには限界があるためだ。韓国女性弁護士会理事を務めたキム・ヨンミ弁護士は「住居侵入は侵入が行われてこそ成立する犯罪なのに、追いかけただけで処罰するのは罪刑法定主義に反する。(性犯罪の)意図があったかどうかも、(被告が)自白しない限り確認が難しく、行動で追認しなければならないが、それも容易ではない」と指摘した。

 このため、今年9月に施行される「ストーキング犯罪の処罰などに関する法律(ストーキング処罰法)」に期待が集まっている。相手の意思に反して、理由なく相手またはその同居人、家族に接近したり、付きまとったりする行為、住居地などで待ち伏せしたり、見張りを続けた場合、最大懲役5年以下の処罰ができる。主にストーキング行為に適用される住居侵入罪(3年以下の懲役または500万ウォン以下の罰金)や軽犯罪処罰法第3条(反則金8万ウォン)に比べれば、処罰は重い。イ・スジョン京畿大学教授(犯罪心理学科)は「追いかける行為を犯罪化し、現行法上の隙を埋めるため作られたのがストーキング処罰法」だとし、「同法が適用されれば(性犯罪の)意図にかかわらず、追いかける行為はストーキング処罰法で処罰できるようになるだろう」と見通した。ただし、ストーキング処罰法は継続的、反復的行為をストーキング犯罪と規定しており、1、2回の接近行為をストーキングで処罰できるかどうかについては懐疑的な反応もある。

シン・ミンジョン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/993997.html?_fr=st1韓国語原文入力:2021-05-06 02:43
訳H.J

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