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「軍部が日々撃ち殺そうとも…」不服従が燃え上がるミャンマーの5月

登録:2021-05-19 10:37 修正:2021-05-20 09:54
現地記者から送られた「抵抗の現場」

 2月1日(現地時間)に起こった軍部クーデターに対抗するミャンマーの市民不服従運動(CDM)が100日を超えた。現地の日刊紙などで働いていたが解雇された記者たちが、諦めることを知らない抵抗の現場とミャンマー市民9人のインタビューを掲載した記事を、ハンギョレに送ってきた。

2月11日、ある女性がミャンマー・ヤンゴンで開かれたクーデター反対デモで「CDM(市民不服従運動)」と書かれた紙を掲げている=写真・ライアン記者//ハンギョレ新聞社

 カン・テ・ウさん(仮名)とソインタさん(仮名)は、ミャンマー中部のある大学の人文学科の教授であり夫婦だ。彼らは今月7日、市民不服従運動(CDM)に参加したという理由で軍部から資格停止処分を受けた。この処分で、彼の家族は政府から提供された私宅を明け渡さなければならなくなった。カン・テ・ウ教授は「私たちはもう住む所がない」としながらも「罪のない人を毎日撃ち殺す軍部の統治の下で働くつもりはない」と述べた。

 カン・テ・ウ教授のように市民不服従運動に参加して資格が停止された大学教授は、ここ5~8日で5千人にのぼる。軍部は今月5日から、約170校の総合大学と短期大学を再開するとして教授に授業再開命令を下したが、多くの教授がこれを拒否した。

 クーデターに反対するミャンマー市民たちの戦いは、街頭だけで行われているのではない。学校や工場、病院、政府庁舎、列車、銀行など生活現場のあらゆる場所で毎日不服従運動が繰り広げられている。クーデター以降、17日現在で802人の市民が死亡したが、ミャンマーの人々は諦めずそれぞれの場所で軍部との戦いを続けている。

2月11日、ミャンマーの公務員たちがヤンゴンで「市民不服従運動」のポスターを持って行進している=写真・ライアン記者//ハンギョレ新聞社

■「軍部統治を拒否する」ミャンマーを止めた市民不服従運動

 ミャンマー最大の都市ヤンゴンの中心に、巨大な英国風建物として建てられたヤンゴン駅は、いま重い静寂が流れている。鉄道庁の公務員が大挙して市民不服従運動に参加し、旧式のヤンゴン循環列車をはじめミャンマーの各地をくもの巣のように連結していた列車が止まったためだ。

 「出勤しないで外に出よう」。武器を持たず軍部に平和的に抵抗する市民不服従運動が、クーデターから100日が過ぎた現在、ミャンマー軍部に大きな打撃を与えている。軍部は民主政府の指導者と活動家を逮捕し権力を掌握したが、健康・保健、教育、交通、通信、経済など各分野の従事者はこれを受け入れていない。教育公務員の多くは、市民を殺して逮捕する軍部の命令に従っていない。軍部は来月1日から学校を開くため圧力をかけているが、教師たちは軍部クーデター後、学校に戻らず不服従運動に参加すると宣言した。大学も同じだ。ミャンマー教員連合は最近ミャンマーの全大学教職員約2万4千人のうち、40%に及ぶ1万1100人が市民不服従運動への参加で停職になったと明らかにした。大学を皮切りに学生たちも登校拒否運動を始め、教育部門全体が止まった状況に置かれている。

 医療部門も同様だ。医師や看護師たちが医療現場の代わりに市民不服従運動に参加したため、多数の国立病院の運営が中止され、患者を退院させなければならない状況だ。ミャンマー軍病院の軍医と看護兵たちがこれを代替しているが、厳しい状況だ。軍は市民不服従運動に参加した医師、看護師などを逮捕するやり方で圧迫しており、今月9日までに保健部公務員など約500人が逮捕または指名手配された。彼らは刑法505A条の「国家安定の破壊」という疑いで最大3年の懲役刑を受け得る。

 銀行の労働者も不服従運動に参加し、今年3月から銀行業務のほとんどがストップしている。軍部は銀行を完全に正常化するために圧力をかけているが、まだ多くの銀行員が出勤を拒否している。軍部統治の状況で金融安定を信じない国民たちは、預金を引き出すために長い列を作っている。

2月3日、ミャンマー最大の都市ヤンゴンのある病院で、医療陣がアウンサンスーチーを象徴する赤いリボンをつけて抵抗を意味する3本の指の敬礼をしている。ミャンマー公共病院の医療陣は軍部クーデターに抗議するためストを含む市民不服従運動を始めた=ヤンゴン/AFP・聯合ニュース

■月給もらえず、社宅を奪われても…全国の公務員約10万人が運動に参加

 今年3月にノーベル平和賞候補に推薦されもしたミャンマーの不服従運動は、軍部が権力を掌握した直後の2月2日、マンダレーのある医師の会から始まった。匿名を求めた軍出身の政治研究家は「私が見る限り、市民不服従運動について軍部は何も準備していない」と話した。最初から軍部が街頭デモは予想したかも知れないが、こんなに巨大な市民不服従運動に直面するとは予想できなかっただろうという分析だ。市民不服従運動には、ミャンマーの国連大使であるチョー・モー・トゥンから政府公館の清掃員まで、幅広く参加している。さらには、一部の軍将校や軍人もこの運動に参加している。

 軍部は予想できなかった事態に遭い、アメとムチを並行している。運動に参加する公務員に対しては逮捕や起訴、解雇などで圧迫し、運動に参加しない公務員は昇進などで優遇する。運動から抜け出して復帰する公務員は叱責なく前のように正常勤務ができるよう懐柔する。

 不服従運動に参加する公務員たちは、月給はもちろん、居住地を失う危険も受け入れている。ミャンマーの下層公務員は、国家が提供する職員用私宅に住んでいるケースが多い。生活環境は良くないが、費用を減らすための苦肉の策だ。不服従運動に参加した場合は、これをあきらめて仏教寺院や支援場所に移動して暮らさなければならない。ミャンマー第2都市のマンダレーで病院の看護師として働くインカンモさん(仮名・25)は、今年2月に不服従運動に参加して以来、社宅を出て暮らしている。しかし、インカンモさんは臨時政府を自任する国民統一政府(NUG)の支援は受けられていない。

2月7日(現地時間)、通りを埋め尽くしたデモ隊が、ミャンマー最大の都市ヤンゴンで「3本指敬礼」を行い、軍部クーデターを糾弾するデモを行っている。この日、ヤンゴンだけでも約10万人のデモ隊が参加したと外信は伝えた=ヤンゴン/ロイター・聯合ニュース

 軍部の圧迫で生計が困難になっている公務員が、不服従運動への参加をあきらめる場合も少なくない。時間が長くなるほどもっと増える可能性が高い。NUGは支援団体と連携して運動に参加する市民を支援しているが、すべてに対して責任を負うには力不足だ。不服従運動に参加するミャンマーの公務員は全体(110万人)の約10%である10万人余りにのぼるが、このうちNUGの支援を受けているのは9千人に過ぎない状況だ。ミャンマー政治研究所の「戦略・政策研究所-ミャンマー」は、「国民たちは軍部に統治権を与えなかった。市民が不服従し続ける状況が続けば、軍部も権力を手放さざるを得ない」と述べた。

ヤンゴン/ハン・サイ記者(仮名)(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/international/international_general/995784.html韓国語原文入力:2021-05-1908:11
訳C.M

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