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ロシア戦勝式典、戦車もなし…ウクライナのドローンの脅威にクーデター説も

登録:2026-05-11 00:51 修正:2026-05-11 08:03
ロシアのプーチン大統領が9日、モスクワの赤の広場で行われた対ドイツ戦勝81周年を記念する軍事パレードを見つめている/タス・聯合ニュース

 ロシアが毎年盛大に執り行ってきた第2次世界大戦の戦勝記念日のパレードは、今年は戦車が1台も登場せず、比較的簡素に幕を閉じた。ウクライナのドローンの射程距離が伸びて式典が危険にさらされるようになったうえ、戦争の長期化で「クーデター説」がささやかれるなど、民意が不安定になっているためと解釈される。

 仏紙「ル・モンド」によると、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は9日(現地時間)にモスクワの赤の広場で開催された記念式典で、「アドルフ・ヒトラーに立ち向かって勝利した世代の偉大な業績(第2次大戦の勝利)は、こんにちウクライナで特別軍事作戦を遂行している兵士たちにインスピレーションを与えている」として、「私は、我々の大義は正当であると固く信じている。私たちは共にある。勝利は我々のものであった。これからも永遠にそうだ」と演説した。2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻から続く戦争が4年を超える中、軍と国民の戦意の高揚を計ったのだ。

 ただし、ハイライトとなる軍事パレードは例年に比べて簡素だった。ロシアは2008年の勝利記念日から機甲車両やミサイルなどの大型兵器を登場させてきたが、今年はそれが登場せず兵士のみが行進し、式典は45分で終了した。戦車や装甲車が動く様子は、会場のスクリーンに映し出されるのみだった。T-90戦車、S-400防空システム、自爆ドローンなどの最新鋭兵器が多数動員された昨年とは対照的だ。

 ル・モンドは「18年ぶりに軍事装備も、士官学生団や軍事学校の学生も登場しなかった」と報じた。北朝鮮軍の数百名の兵士が史上初めてロシア軍と行進したのが注目される程度だった。

 式典に出席した外国の首脳も、ロシアの友好国であるベラルーシ、カザフスタン、ラオスなど5カ国の指導者のみ。欧州からは、プーチン大統領に近いスロバキアのロベルト・フィツォ首相がこの日、モスクワを訪問中だったが、式典には姿を見せなかった。昨年は中国の習近平国家主席が、プーチン大統領と肩を並べて軍事パレードに臨席している。

9日にモスクワの赤の広場で開催された戦勝記念式典に参加するロシア軍の兵士たち/タス・聯合ニュース

 式典が簡素化されたのは、ウクライナ軍に爆撃されることが懸念されたからだ。ウクライナは数週間にわたってバルト海の石油輸出港や内陸の軍事施設を空爆し、長距離攻撃能力を誇示してきた。先月25日に国境から1700キロ離れたウラル山脈の空軍基地を自爆ドローンで攻撃し、Su-57戦闘機などを破壊したほか、今月4日には独自開発した巡航ミサイル「フラミンゴ」で1500キロ離れた軍需工場を攻撃している。同日には赤の広場から7キロ離れた高層マンションがウクライナ軍のドローンで攻撃されている。

 戦争の長期化で世論が険悪化していることも、クレムリンの警戒の背景だと読み取れる。国営の全ロシア世論調査センター(VTsIOM)による調査でのプーチン大統領の政権遂行に対する支持率は、2023年4月には80.4%だったものの、先月は65.6%と、3年で14.8ポイント下落している。ウクライナ戦争開始以降で最低だ。

 これは戦費の支出と西側による経済制裁で景気が停滞するとともに、人的被害が拡大しているからだ。ロシアの独立系メディア「メドゥーザ」と「メディアゾナ」はこの日、ロシアの相続登記資料や戦死者名簿などを分析し、昨年末までの間にウクライナ戦争でロシア軍に35万2000人にのぼる死者が出ていると報じた。ロシア政府が世論の動揺を抑えるため、3月からテレグラムやワッツアップなどのモバイルメッセンジャーの速度を落としていることも、反感を買っている。

 一部では、世論の動揺に乗じたロシア国内での「クーデター説」まで広がっている。CNNは4日、欧州の情報機関の報告書を引用し、暗殺や軍部によるクーデターを懸念したプーチン大統領は今年に入ってから軍部隊の視察を完全に中止しており、ロシア北西部バルダイの別荘への訪問も断っていると報じた。外部への内通に備えてクレムリン職員のスマートフォンや公共交通機関の利用を禁止するなど、周囲のセキュリティーも前例のないほど徹底されている。

戦勝記念式典が5日後に迫っていた今月4日、モスクワの高層複合住宅がウクライナ軍のドローンによって攻撃された。ドローンが防空網を突破してロシア国防省から3キロの地点まで達したことは、衝撃を与えた/タス・聯合ニュース

 AFPによると、記念式典も例年より厳重な警備の下で行われた。当局はモスクワ都心のモバイルインターネットを遮断。通行規制により街の人通りも少なかった。AFPの記者が都心で出会った36歳の経済学者エレナさんは、「インターネットが必要なのに使えない」として、軍事パレードを見るつもりはないと語った。

 一方、この日の式典は米国のドナルド・トランプ大統領が仲裁した停戦の中で行われた。トランプ大統領は8日、自身の要請によりロシアとウクライナが9日から11日までの3日間にわたって停戦することになったと語った。ロシアは4日、戦勝記念日を含む8日と9日の2日間にわたって停戦すると一方的に宣言していたが、米国がウクライナを説得して停戦を実現させた。

 ただし、この期間中もロシア軍はウクライナのヘルソン州やザポリージャ州などをドローンで空爆し、少なくとも3人の民間人が死亡。ロシア国防省も、ウクライナ軍が8日から9日にかけて停戦に8970回違反したと主張した。一方、式典会場を狙ったウクライナ軍の「挑発」はなかったと語った。

 ル・モンドは「赤の広場の軍事パレードが支障なく行われるためには、ウクライナの(空爆をやらないという)『善意』が必要だった。クレムリンが現在直面している困難な状況をよく示すもの」だと指摘した。

チョン・ホソン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/international/europe/1257930.html韓国語原文入力:2026-05-10 13:55
訳D.K

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