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「米帝国主義」時代は今になって花開くのか【コラム】

登録:2025-07-21 06:45 修正:2025-07-21 08:53
//ハンギョレ新聞社

 ブラジルのルイス・イナシオ・ルーラ大統領は「トランプ大統領は米国を統治するために選出されたのであって、世界の皇帝になったわけではない」と述べた。ドナルド・トランプ大統領が50%の関税を課すと脅し、露骨な内政干渉に乗り出したことを受け、17日のCNNとのインタビューでこのように言い放った。多くの国の指導者たちが自分たちの考えを代弁した痛快な言葉だと思っただろう。

 「トランプ皇帝」とまで言われる中、旧態依然の質問が思い浮かんだ。米国は帝国主義国家なのか否か。帝国主義国家ならば、どこまで帝国主義国家なのだろうか。世界の人々は長い間このような疑問を抱いてきた。(この疑問の)答えを求めるためには、帝国主義をどのように規定するかも重要だ。米国は植民地争奪戦を繰り広げた典型的な帝国主義国家とは明らかに違った。だが、一方では覇権国としての行動で非難を浴びてきた。

 米国に大きく影響される韓国人もこの答えを求めようとしてきた。米国をどのように規定するかによって、韓国という国家と社会の性格も変わるからだ。1980〜90年代に左派は韓国が反植民地なのか新植民地なのかをめぐり論争を繰り広げた。一方、右派側はこのような発想をタブー視した。彼らにとって、このような考え方や表現は不敬なものだ。

 ところが、最近は左右にかかわらず「米国がおかしくなった」という人が多くなった。世界中に関税の鞭を振り回し、少しでも削りたいなら貢物を献上せよと脅す行動は、前例にないものだ。交渉方式も類を見ない点では同じだ。生徒たちを皆ひざまずかせ、一つひとつ宿題をチェックして、気に入らなければいつまでも居残り勉強をさせるやり方だ。多くの国の関係者が何度もワシントンを訪れ、頭を下げているが、宿題チェックを通過できずにいる。

 トランプ氏が政権を握れば、多くの国を苦しめるだろうという予想は一般的だった。だが、ここまですると見通した人は多くなかった。トランプ大統領は同盟にさらに苛酷だと言われている。同盟だからこそより甘く見ているのだ。帝国主義の秩序では、実はほとんどが従属国であり、真の同盟は珍しい。トランプ大統領はカナダとグリーンランドを併合するとまで言っている。「これが帝国主義でなければ何なのか」と言われても仕方がない。

 では、トランプ大統領は正統から外れた異端、大きな流れで一時的に飛び出した突然変異なのだろうか。米国は自ら反帝国主義の柱であることを掲げてきた。かつて第6代大統領のジョン・クィンシー・アダムスは「米国は退治する怪物を探しに外の世界に飛び出すことはしない」と宣言した。多くの米国の指導者が旧世界(欧州)の不道徳さにため息をついた。第1次世界大戦末期の1918年にウィルソン大統領が民族自決主義を宣言したのは重要な事件だ。1956年にスエズ運河の国有化を宣言したエジプトを相手に戦争に出た英国を米国が思いとどまらせたのも決定的な場面だ。

 しかし、米国を「純粋な」反帝国主義国家とみるのは、いかなる基準で考えてもナイーブすぎる。米国は領土への欲がない覇権国だと言われてきた。ところが、近代的帝国主義が発展した19世紀当時、米国は西部に拡張していたため、海の向こうに関心を持つ余裕がなかった。米国領土の60%ほどは19世紀に奪い、割譲され、買い入れたものだ。広い土地で実行した奴隷労働、奴隷解放後の黒人の境遇は、どの植民地の残酷さも凌駕するものだった。ハワイ、キューバ、フィリピン、その他の太平洋の多くの島を占領したことを見ても、領土への欲がなかったとは言いがたい。米国は自国のあるアメリカ大陸の国々をひどく抑圧した。

 米国の歴史には、このようにヤヌス的な側面がある。米国のエリートたちは、戦略的利害と道徳的価値の間の矛盾だという説明を提示する。米国は矛盾が発生すれば躊躇なく価値より利益を選んだ。しかし、機会があるごとに民主主義と自由を擁護する姿で映ろうとした。そのようなマーケティングが米国のイメージ形成に大きな役割を果たした。実際、かつての中華帝国やソ連のような盟主国も、自分に従う国々には太っ腹なふりをした。 中国側は周辺国と朝貢貿易をしながら、相手により利益になるよう配慮したりもした。 ソ連は自国より豊かな東欧諸国にエネルギーなどを安く提供し、忠誠を取り付けようとした。

 トランプ大統領の独創性は、このような大国らしさ、倫理性、偽善など、厄介なものを全部脱ぎ捨てたことにある。来年11月の中間選挙が終われば、彼の勢いが衰えると期待する人も多い。退任の際に歴代最高齢の米大統領記録を樹立する彼は、3年余りで舞台から降りなければならない。ところが、そのような人を2度も大統領に選んだ米国人はどこにも行かない。

 大器晩成の「米帝国主義」時代は今になって花開くのだろうか。

//ハンギョレ新聞社
イ・ボニョン | 経済産業部 先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1208932.html韓国語原文入力: 2025-07-2018:58
訳H.J

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