米国のドナルド・トランプ政権が、南アフリカ共和国の白人49人の難民地位を認め、米国内での定住を受け入れた。就任後に事実上難民の受け入れを遮断したトランプ政権が、米国市民権を保有する移民まで追放しているなかで取った措置であるため、物議を醸している。
ニューヨーク・タイムズやロイター通信などは11日、南アフリカで差別を受けたと主張するアフリカーナー(Afrikaner)49人を乗せた米国政府のチャーター機が、ヨハネスブルクを出発したと報じた。米国大使館側の指示により、これらの人たちとメディアとの接触は遮断された。アフリカーナーとは17世紀に南アフリカに移住したオランダやフランスからの移民の子孫で、40年以上にわたり悪名高いアパルトヘイト(人種隔離政策)を実施した南アフリカに居住する白人集団を指す言葉だ。
■非白人には壁を築き、白人には『空の道』を開く
彼らは黒人が多数を占める南アフリカで自分たちが人種差別によって雇用を失い、暴力の標的になるなど迫害を受けていると主張してきた。このような主張に同調し、トランプ大統領は2月、南アフリカに対する米国政府の援助を中止する大統領令に署名し、これらの人たちの米国再移住を支援すると明らかにした。
米国内では、非白人を相手に強力な反移民政策を施行し、各地で摩擦を引き起こしているトランプ政権のダブルスタンダード(二重規範)だという批判が出ている。最も立場の弱い人たちを保護するために考案された難民システムに相反するというものだ。トランプ大統領就任後、米政府はスーダンやコンゴ民主共和国などから飢えと戦争を逃れて難民申請をした人たちの審査をほぼ全面的に停止した。(南アフリカからの白人の難民認定については)通常であれば数年かかる難民地位の認定手続きが、3カ月ほどで実現した点も問題視された。
12日、米国に到着する予定の彼らの難民受け入れによって、ぎくしゃくしていた米国と南アフリカの関係はさらに悪化する見込みだ。南アフリカ外務省は、9日に米国務省側と電話協議をした後に発表した報道官声明で「きわめて遺憾なことに、南アフリカ人を難民という名目で米国に再定住させることは、全面的に政治的動機によるものと思われ、南アフリカの憲法的民主主義に疑問を提起するために考案されたものとみられる」と批判した。また、アフリカーナーたちが差別を受けているという主張は「国内および国際難民法が要求する迫害の基準を満たしていない」と補足した。
アフリカーナーたちとトランプ政権が「差別」と規定したのは、今年初めに南アフリカのシリル・ラマポーザ大統領が署名した土地収用法に起因する。かつて南アフリカでは、黒人の居住範囲を領土の7%に制限し、結果的に追い出したが、アパルトヘイト撤廃後、数十年間にわたる土地再分配政策でも成果は小さいとして、政府が審査を経て個人の土地を無償で収用できるようにしたのだ。現時点ではこの法によって土地が収用された事例はないが、トランプ大統領は南アフリカ政府が「土地を没収」していると繰り返し主張してきた。
■人口7%の白人が私有地の4分の3を所有
アフリカーナ―たちの提起はあったが、それでも彼らの南アフリカでの地位と状況は依然として大多数の黒人に比べると圧倒的に優位にある。ロイターは、国際学術誌「政治経済学レビュー」を引用し、白人が南アフリカの私有地の約4分の3を所有しており、黒人の大多数より約20倍に達する富を保有していると報じた。南アフリカ国内の白人は全人口の7%(450万人)程を占めており、うち約270万人がアフリカーナーに分類される。
AP通信は、アフリカーナー団体「アフリフォーラム」の話を引用し、2023年に白人所有の農場に対する攻撃によって49人が死亡し、南アフリカ国内の年間殺人事件は2万件以上だと指摘した。米国務省によると、3月までで8000人を超えるアフリカーナーが米国に難民地位認定を申請している。