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韓国を締め付けるドル高、原油価格、物価…経済政策の前提が変化

登録:2024-04-16 08:52 修正:2024-04-16 15:29
中東地域の緊張の高まりの影響で、KOSPIが取引開始直後に2650台に下落した15日午前、ソウル中区のハナ銀行本店のディーリングルームの電光掲示板にKOSPIと為替レートが表示されている/聯合ニュース

 ドバイ原油は1バレル当たり100ドル突破が目前で、ドル相場は1ドル=1400ウォンに迫る。それにより、農産物価格の異常な高騰で不安な流れを示していた物価の上昇圧力がいっそう強まっている。そのうえ、予想外の強固な経済回復力を示す米国の政策金利引き下げの可能性も薄くなっていることで、高金利と物価高の長期化の懸念が頭をもたげている。イランとイスラエルの紛争の激化のような地政学的な不確実性も深まっていることで、韓国経済に対する不安が高まっている。

 どれも韓国政府が昨年末と年初に描いていた青写真とは異なる事態の展開だ。例えば、政府は今年のドバイ原油の平均価格は1バレル当たり81ドル、消費者物価上昇率は上半期中は2%台で安定するものと予想していた。専門家たちは、内外環境の変化を考慮し、経済政策の枠組みを改めることが必要だと口をそろえる。特に、物価高と高金利のリスクに脆弱な階層を支援するために、財政に積極的な役割を果たさせるよう注文する。

米国のCHIPS法に伴う補助金の支給(単位:ドル)資料:米国政府 //ハンギョレ新聞社

■昨年の政府の青写真とは異なる展開

 3大原油のひとつであるWTI(テキサス州西部地域の中質原油)価格は1バレル当たり90ドル突破が迫っている。WTIは昨年9月末に1バレル当たり95ドルにまで高騰し、その後、昨年末には70ドル台まで下落したが、今年に入って急激に上昇していた。世界的な景気回復に加え、中東の不安、投機需要までもが追い打ちをかけている影響だ。韓国が輸入している石油であるドバイ原油はすでに1バレル当たり90ドルを突破しており、100ドルが迫っている。今年1月以降のドバイ原油の価格上昇率は15.1%。

 現政権発足当時の2022年第2四半期から上昇傾向にあったドルは、ここ最近さらに急騰している。7取引日で約26ウォン跳ね上がり、12日現在は1ドル=1375.4ウォン。年初は1ドルが1270ウォン台だったことを考えると、ここ3カ月あまりの上昇幅は異常だ。今年第1四半期のドル価格平均(1328.45ウォン)は、2008年のグローバル金融危機以降で2番目の高さだ。

 原油高とドル高はいずれも製品の生産コストを押し上げるため、物価不安を膨らませる。企業の収益性も悪化させるため不渡りの可能性を高め、雇用と賃金の萎縮も招きうる。

 これは、昨年末と年初に政府が描いた青写真とは異なる。政府は今年の韓国経済について、輸出部門が景気全体をけん引し、物価上昇率も次第に低下していくため、今年上半期には物価上昇率が2%台で安定すると予想していた。また、米国の金利引き下げが6月ごろに始まれば、韓国銀行の政策金利引き下げも今年下半期に始まると政府は期待していた。このような青写真の下、政府は、今年上半期に建設部門を中心として財政執行スピードを上げ、下半期には通貨政策の変化を通じて下半期の財政不足の影響を軽減できるとの見通しを示していた。このような戦略は、今年初めに発表された「2024年経済政策の方向」に表れている。

■状況の変化に合わせて経済政策を見直すべき

 輸出部門の回復の速さと、それに追いつけていない内需の不振は深化している。半導体など特定の品目中心の予想外の輸出拡大の速さが、好材料として景気全般へと拡大できずにいるということだ。高金利と物価高の長期化で、内需部門の回復が遅れる可能性はよりいっそう高まっている。代表的な消費指標である小売販売額指数(季節調整)の2月現在の値がここ39カ月で最低値となったこと、3月の就業者数の増加幅が最近3年あまりの最小水準になっていることは、このような懸念を強めている。

 専門家は、経済政策基調の変更を政府に要求している。予想とは異なる内外の経済環境を考慮し、リスク管理を強化することはもちろん、政策の新たな枠組みを作ることが必要だというわけだ。特に、高金利と物価高という環境への対応力が脆弱な階層に対する支援を拡大するとともに、内需部門を回復させるためには、減税と支出の抑制を骨子とする「縮小均衡的な財政運用」から脱却すべきだという声が強い。

 包容財政フォーラムのキム・ユチャン会長(元韓国租税財政研究院長)は、「現政権は財政支出の拡大を除く景気回復の手段をすべて動員したが、効果はなかった。政府支出を増やして経済の活性化を助け、経済が回復すれば改めて財政を健全化するというやり方の弾力的な財政運用を検討すべきだ」と述べた。低所得層への支援を厚くすべきだとする声もあがっている。明知大学のウ・ソクチン教授(経済学)は、「租税支出(減税)は税金を納める能力のある階層にのみ恩恵が行く。物価高という状況を考慮して政策金利を高くすべき状況であるなら、脆弱階層とリスクを抱える借主を対象とした財政支援を拡大する政策の組み合わせが必要だ」とし、「財源調達のために減税政策の中止、相対的に余裕のある部門に対する増税なども考慮しうる」と語った。

アン・テホ、パク・スジ、チェ・ハヤン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/economy/economy_general/1136562.html韓国語原文入力:2024-04-15 06:00
訳D.K

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